【Primaveraに降る雪】 20 ラキ編 3
「お前・・・グラサンは? 何でそんなに弱ってんだよ・・・。 いつものタフさはどうしたんだよ・・・。」
「・・・この世界に飛ばされる時に落としてしまったようです。 長く陽に当たりすぎて 少し疲れてしまいました・・・。 大丈夫ですよ・・・ ・・・本当に良かった ・・・あなたに会えて」
チリッと肩の辺りが揺らいだように見えて思わず駆け寄る。
触れようとしたラキの手を拒むように、シンが少し声を張って目の前の彼の名を呼んだ。
「ラキ。申し訳ありませんが 今、入ってきた扉に鍵を・・・掛けてきて頂けませんか・・・。 この部屋の主は今日不在のようですが、念の為・・・。」
何でそんな事が分かるんだ?という表情のラキに、「入り口にそう書かれた看板が掛けてありましたから」と返す。
「・・・読めるのか」
「はい 遠い昔の記憶ですけどね・・・」
珍しく真面目なシンに、言われたとおりに鍵を掛けて戻ってくる。
その間にシンは小さく咳をして床に座りなおしていた。
暗くてよく見えないが、さっきから脇腹を押さえているような気がする。
同時に何か思い出しそうで、頭の中がざわついた。
「・・・腹・・・ 怪我したのか?」
「・・・ 大丈夫です。 ・・・動けるまで少し時間がかかるかもしれませんが。心配しないで」
「見せろよ」
「嫌です」
「は? 見せろよ 怪我、したんだろ?」
「・・・ ラキの手が汚れます」
「関係ねぇ 見せろ マスター命令だ」
「いいえ もうマスターではありません」
・・・そうだった。
シンが逆らってくるからムカついて一瞬忘れていた。
「っせーよ! 俺が見せろっつったら見せろよ馬鹿野郎!」
「・・・っ」
脇腹を押さえるシンの腕を無理矢理引き剥がしてそこを覗き込む。
黒い服が、カーテンの隙間から漏れる光の加減で、闇に紛れながらそこだけ嫌な光り方をしていた。
ラキは目を見開きながらその傷を見つめ「そう・・・だ・・・」と呟いた。
思い出した。あの時、飛ばされる直前、でかい石が俺目掛けてぶつかってきて・・・それから・・・
「まさか・・・ これ・・・ 俺の所為か・・・? 俺・・・ ~~~・・・っ」
見開いた黒い瞳を揺らしながら、自分から顔を背けるシンを見詰める。
――――・・・やがて、観念したように 俯いたままゆっくりとシンが話し始めた。
「―――が・・・ 分からないのです。」
「・・・?」
「いつもすぐに見つけられたラキの居場所が・・・ 感じ取れなくなりました。」
そう静かに告白するシンの言葉をラキは黙って聞き続ける。
「さっき・・・ あの街で、姿を変えてあなたを探していた時も・・・ 段々と分からなくなってきて・・・
・・・あの時はもう ・・・でも、 何とか見つけられて良かった・・・。
ラキに会えない焦らしプレイも、本当に会えないと思うと興奮できないものですね。」
目を細めて力無く話すシンの顔を覗き込んで、両手で頬を挟み込むと上を向かせて無理矢理目を合わせた。
その目を見たラキは驚いて息を止めた。
あの燃える様な深紅の瞳からは色が抜け、薄い銀色に変わっている。
「ぇ・・・」と思わず声を漏らすラキに、シンは再び薄く微笑みながら「・・・ラキに怪我が無くてよかった・・・」と囁いた。
「・・・この世界に飛ばされる時に落としてしまったようです。 長く陽に当たりすぎて 少し疲れてしまいました・・・。 大丈夫ですよ・・・ ・・・本当に良かった ・・・あなたに会えて」
チリッと肩の辺りが揺らいだように見えて思わず駆け寄る。
触れようとしたラキの手を拒むように、シンが少し声を張って目の前の彼の名を呼んだ。
「ラキ。申し訳ありませんが 今、入ってきた扉に鍵を・・・掛けてきて頂けませんか・・・。 この部屋の主は今日不在のようですが、念の為・・・。」
何でそんな事が分かるんだ?という表情のラキに、「入り口にそう書かれた看板が掛けてありましたから」と返す。
「・・・読めるのか」
「はい 遠い昔の記憶ですけどね・・・」
珍しく真面目なシンに、言われたとおりに鍵を掛けて戻ってくる。
その間にシンは小さく咳をして床に座りなおしていた。
暗くてよく見えないが、さっきから脇腹を押さえているような気がする。
同時に何か思い出しそうで、頭の中がざわついた。
「・・・腹・・・ 怪我したのか?」
「・・・ 大丈夫です。 ・・・動けるまで少し時間がかかるかもしれませんが。心配しないで」
「見せろよ」
「嫌です」
「は? 見せろよ 怪我、したんだろ?」
「・・・ ラキの手が汚れます」
「関係ねぇ 見せろ マスター命令だ」
「いいえ もうマスターではありません」
・・・そうだった。
シンが逆らってくるからムカついて一瞬忘れていた。
「っせーよ! 俺が見せろっつったら見せろよ馬鹿野郎!」
「・・・っ」
脇腹を押さえるシンの腕を無理矢理引き剥がしてそこを覗き込む。
黒い服が、カーテンの隙間から漏れる光の加減で、闇に紛れながらそこだけ嫌な光り方をしていた。
ラキは目を見開きながらその傷を見つめ「そう・・・だ・・・」と呟いた。
思い出した。あの時、飛ばされる直前、でかい石が俺目掛けてぶつかってきて・・・それから・・・
「まさか・・・ これ・・・ 俺の所為か・・・? 俺・・・ ~~~・・・っ」
見開いた黒い瞳を揺らしながら、自分から顔を背けるシンを見詰める。
――――・・・やがて、観念したように 俯いたままゆっくりとシンが話し始めた。
「―――が・・・ 分からないのです。」
「・・・?」
「いつもすぐに見つけられたラキの居場所が・・・ 感じ取れなくなりました。」
そう静かに告白するシンの言葉をラキは黙って聞き続ける。
「さっき・・・ あの街で、姿を変えてあなたを探していた時も・・・ 段々と分からなくなってきて・・・
・・・あの時はもう ・・・でも、 何とか見つけられて良かった・・・。
ラキに会えない焦らしプレイも、本当に会えないと思うと興奮できないものですね。」
目を細めて力無く話すシンの顔を覗き込んで、両手で頬を挟み込むと上を向かせて無理矢理目を合わせた。
その目を見たラキは驚いて息を止めた。
あの燃える様な深紅の瞳からは色が抜け、薄い銀色に変わっている。
「ぇ・・・」と思わず声を漏らすラキに、シンは再び薄く微笑みながら「・・・ラキに怪我が無くてよかった・・・」と囁いた。
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