【Primaveraに降る雪】 16 カイト 屋上編
「デン・・・っ デンが居るんだ・・・っ 待って まだ居てよっ!」
タケルという青年からデンの名を聞いて、猫耳尻尾どころではなくなったカイトは電が居るという屋上に向かって校舎の階段を2段飛ばしで駆け上がる。
息を切らす唇は「デン・・・ デン・・・」と無意識に彼の名を呟いていた。
前回逢えた時、自分が寝ている間に電の姿が消えていた事がとても残念で、居なくなる瞬間まで一緒に居られなかった事を心から後悔していた。
生きる世界が違うカイトと電。誰かの力を借りないと逢うことができない二人。
もしかしたらもう逢えないかも とも思った。
その電と また逢える・・・
階段を駆ける足に一層力が込もるのだった。
「いっぱい・・・ 話したい事っ たくさんあるんだ・・・っ それから・・・」
何となく 電に優しく微笑んで欲しい と思った。
俺を見たら デンは喜ぶかな。
また逢えたね って笑ってくれるかな。
抱きついたら 背中 ポンポンって してくれるかな。
込み上げるものをぐっと我慢して一生懸命に走る。
長い階段を駆け上がり、屋上に繋がる扉の前に辿り着くと、その勢いのまま飛び出した。
「デンっ!!」♪♬ ♪
2、3歩駆けて辺りを見回す。
眩しいくらい明るい広い屋上を 電の姿を探してカイトの瞳がキョロキョロと彷徨った。
ふと自分の斜め後ろに人の気配を感じて振り返る。
居た!見覚えのある背格好。綺麗な柔らかい黒髪。後姿だけど間違い無い。
口を横一文字に結んで再び込み上げてくるものをぐぐっと堪えて少し早足でその背中に近付いた。
「・・・ デン・・・」
デンと呼ばれた彼は丁度電話を終えた所だったらしく、携帯を制服にしまうとこちらにゆっくりと振り向いた。
黒い瞳に金色の光を走らせて、電がカイトを見ると 一瞬驚いたような顔をして目を見開いた。
「お前・・・」
「うん、 久し振り!」
また 逢えた。
本当に逢えた。
満面の笑みで電に笑い掛ける。
「誰だ?」
「えっ・・・!?」
笑顔のカイトとは逆に無表情で返す電の言葉。
予想外の応えにカイトの思考が一瞬止まる。
「・・・ぇ、 俺・・・ え? デ・・・ン?」
「その格好・・・ ここの生徒じゃないだろ 何してんだこんな所で」
思いも寄らなかった言葉を次々に掛けられて 戸惑いながらも電から目が離せない。
何で そんな事を言うんだろう。
俺を 覚えてない?
忘れたのかな・・・。
ニコニコしていた顔がみるみる翳って萎縮してしまう。
忘れられたなんて認めたくなくて、 訊かれたけど、自分の名前を言いたくなかった。
俺は覚えてるよ。
デンの顔忘れてないよ。
ちょっとからかっただけだよね。
すぐに「嘘だよカイト」って言ってくれるよね。
そんな必死の想いが届く事も無く警戒心剥き出しの瞳で見つめられ、カイトは心臓がぎゅうっと締め付けられた。
「・・・ ・・・ご、めん。 人・・・違いかも」
俯いて両手の拳を力一杯握り締めて震える声でそう呟いた。
きっとここはあのデンがいる世界とは別の世界なんだ。
目の前の彼は俺と出逢ってないデンなんだ。
逢えて嬉しい気持ちと抱き付きたかった想いを抑え込んで再び顔を上げるとニッコリと電に笑顔を向けた。
「・・・間違えて↑ごめん↓! じゃあ↓ねっ↑!」
「ぇ・・・、おい・・・」
無理矢理明るく振る舞ったせいで声が裏返ってしまう。
何かを言い掛けた電を置いて、今来た階段を駆け下りて行った。
「・・・ 何だ今の・・・ 泣くのかと思った・・・」
屋上から一気に下りて長い廊下を宛てもなく走り続ける。
ここが何階のどこなのか既に分からなくなっていた。
何回か角を曲がって突き当たりまで来ると速度を緩めてとぼとぼと歩いて足を止めた。
行き止まりにある教室、入り口を見上げると『生徒会室』と知らない字で書いてある。
中を覗くと誰も居ないようだ。
カイトは静かにその部屋に入り、窓際の長机に腰掛ける。
窓から差し込む暖かい春の陽射しがポカポカと背中を包み込んできて、足を投げ出してボーッとしているとだんだん眠くなってきた。
このままここで寝てたら 元の世界に戻れるかもしれない。
じわっと目頭が熱くなって 机に突っ伏して目を閉じるとすうっと眠りに落ちていった・・・。
タケルという青年からデンの名を聞いて、猫耳尻尾どころではなくなったカイトは電が居るという屋上に向かって校舎の階段を2段飛ばしで駆け上がる。
息を切らす唇は「デン・・・ デン・・・」と無意識に彼の名を呟いていた。
前回逢えた時、自分が寝ている間に電の姿が消えていた事がとても残念で、居なくなる瞬間まで一緒に居られなかった事を心から後悔していた。
生きる世界が違うカイトと電。誰かの力を借りないと逢うことができない二人。
もしかしたらもう逢えないかも とも思った。
その電と また逢える・・・
階段を駆ける足に一層力が込もるのだった。
「いっぱい・・・ 話したい事っ たくさんあるんだ・・・っ それから・・・」
何となく 電に優しく微笑んで欲しい と思った。
俺を見たら デンは喜ぶかな。
また逢えたね って笑ってくれるかな。
抱きついたら 背中 ポンポンって してくれるかな。
込み上げるものをぐっと我慢して一生懸命に走る。
長い階段を駆け上がり、屋上に繋がる扉の前に辿り着くと、その勢いのまま飛び出した。
「デンっ!!」♪♬ ♪
2、3歩駆けて辺りを見回す。
眩しいくらい明るい広い屋上を 電の姿を探してカイトの瞳がキョロキョロと彷徨った。
ふと自分の斜め後ろに人の気配を感じて振り返る。
居た!見覚えのある背格好。綺麗な柔らかい黒髪。後姿だけど間違い無い。
口を横一文字に結んで再び込み上げてくるものをぐぐっと堪えて少し早足でその背中に近付いた。
「・・・ デン・・・」
デンと呼ばれた彼は丁度電話を終えた所だったらしく、携帯を制服にしまうとこちらにゆっくりと振り向いた。
黒い瞳に金色の光を走らせて、電がカイトを見ると 一瞬驚いたような顔をして目を見開いた。
「お前・・・」
「うん、 久し振り!」
また 逢えた。
本当に逢えた。
満面の笑みで電に笑い掛ける。
「誰だ?」
「えっ・・・!?」
笑顔のカイトとは逆に無表情で返す電の言葉。
予想外の応えにカイトの思考が一瞬止まる。
「・・・ぇ、 俺・・・ え? デ・・・ン?」
「その格好・・・ ここの生徒じゃないだろ 何してんだこんな所で」
思いも寄らなかった言葉を次々に掛けられて 戸惑いながらも電から目が離せない。
何で そんな事を言うんだろう。
俺を 覚えてない?
忘れたのかな・・・。
ニコニコしていた顔がみるみる翳って萎縮してしまう。
忘れられたなんて認めたくなくて、 訊かれたけど、自分の名前を言いたくなかった。
俺は覚えてるよ。
デンの顔忘れてないよ。
ちょっとからかっただけだよね。
すぐに「嘘だよカイト」って言ってくれるよね。
そんな必死の想いが届く事も無く警戒心剥き出しの瞳で見つめられ、カイトは心臓がぎゅうっと締め付けられた。
「・・・ ・・・ご、めん。 人・・・違いかも」
俯いて両手の拳を力一杯握り締めて震える声でそう呟いた。
きっとここはあのデンがいる世界とは別の世界なんだ。
目の前の彼は俺と出逢ってないデンなんだ。
逢えて嬉しい気持ちと抱き付きたかった想いを抑え込んで再び顔を上げるとニッコリと電に笑顔を向けた。
「・・・間違えて↑ごめん↓! じゃあ↓ねっ↑!」
「ぇ・・・、おい・・・」
無理矢理明るく振る舞ったせいで声が裏返ってしまう。
何かを言い掛けた電を置いて、今来た階段を駆け下りて行った。
「・・・ 何だ今の・・・ 泣くのかと思った・・・」
屋上から一気に下りて長い廊下を宛てもなく走り続ける。
ここが何階のどこなのか既に分からなくなっていた。
何回か角を曲がって突き当たりまで来ると速度を緩めてとぼとぼと歩いて足を止めた。
行き止まりにある教室、入り口を見上げると『生徒会室』と知らない字で書いてある。
中を覗くと誰も居ないようだ。
カイトは静かにその部屋に入り、窓際の長机に腰掛ける。
窓から差し込む暖かい春の陽射しがポカポカと背中を包み込んできて、足を投げ出してボーッとしているとだんだん眠くなってきた。
このままここで寝てたら 元の世界に戻れるかもしれない。
じわっと目頭が熱くなって 机に突っ伏して目を閉じるとすうっと眠りに落ちていった・・・。