【Primaveraに降る雪】 14 ラキ編 はじまり
「・・・・・何で俺、樹の上にいるんだ・・・」
気が付くとラキは大きな桜の樹の枝に卍のような格好で絡まっていた。
満開の桜の隙間から何やら白い線で楕円が描かれた広い地面が見える。
偶然鉢合わせた精霊達の魔法に巻き込まれ、ラキもカイト達と同じ世界に飛ばされていた。
『私立清城学園』のグラウンドの傍、学校をぐるっと囲むように植えられた桜の中にラキは居た。
「何だここ 建物ばっかじゃねぇか・・・ あのちっこい奴の魔法で飛ばされたのか? これ・・・現実か??」
絡まった身体を解きながら 高い枝からひらりと飛び降りる。
髪に入り込んだ無数の花びらをフルフルと頭を振って払い落とし、ポンポンと服を整えて胸に手を当てた時、
ふと何かを思い出して手を止めた。
「・・・! シン・・・! そうだ、シンは・・・!?」
ここに飛ばされる直前、自分の目の前に飛び込んできた黒い狼。
あれは確かに姿を変えたシンだった。
吸血鬼は、狼やコウモリに変身できる能力を持っている。
気配を隠して何か行動を起こす時はその姿のほうが都合がいい。
あいつ、俺に気付かれないようにこっそり付いて来てたんだ・・・。
あいつも俺と一緒に、あの魔法に巻き込まれたはず・・・
俺と同じでシンもどこかに飛ばされたかもしれない。
契約破棄して別れたのに、俺を 守ってくれた・・・のか・・・?
探さないと!
勝手に余計な事しやがって・・・。
ついでにストーカー行為をしたことも一緒に思いっ切り怒鳴ってやらないと気が済まない。
取り敢えず誰かに話を聞いてみようと、人が沢山居そうな校舎に向かって走って行った。
「変な格好の人間だらけだな・・・ 軍隊か? 何かの組織か? ガキしかいねぇみたいだけど・・・」
職員玄関から廊下に出て少し歩くと向こうから数人の生徒がふざけながら歩いてくる。
そのグループに近付いてラキから声を掛けた。
「なぁ 黒い狼知らねぇか」
「? 何? 誰だよいきなり突拍子も無い事言ったの・・・」
「は? だから体育の野嶋の胸毛が凄いって話だろ?」
「違うって! のじマンの事じゃなくて 誰か今 狼 って言っただろ」
「まぁある意味 のじマンの胸毛は狼並みだけど・・・」
「おーい・・・ 俺が見えねぇのか? ・・・ ・・・話になんねぇな」
いくら話し掛けても話が噛み合わない所か目も合わない。
他にも何人かに声を掛けて同じ質問をしてみるが、誰とも会話が成立しなかった。
何も進展が無い事に少し苛立ちながらシンを探して校舎内を歩き回る。
中庭に続く廊下に差し掛かると何やら聞き覚えのある声が聞こえてきて無意識に息を殺してしゃがみ込んだ。
声がする方へ足音を立てずに近付き、窓の隙間から中庭をそっと覗いてみる。
・・・・はぁ、 一番逢いたくない奴をまた見つけちまった・・・。
満開の桜の樹の下、あのカイトが居る。
やっぱりあいつも飛ばされてたか・・・。
誰かと何かを話しているようだが、その話している相手の姿は見えない。
「ありがとう!」
清々しいほど満面の笑みでそう叫んだカイトがくるっと向きを変えて走り出し、中庭から廊下に出ると階段目掛けてあっという間に駆けて行った。
誰か居んのか・・・?
角を曲がって消えていくカイトの背中を眺めながら再び中庭に意識を戻すと、誰も居ない大きな桜の樹の近くから声だけが聞こえてくる。
「――――――森に戻って落ちてきた四人の行く末を見守るか。そういえば一人は人間じゃなかったな」
『その人なら、弱ってて今にも死にそうだよっ、って、腰を撫でるなってばっ!――――――』
え? 今 何て言った? 落ちてきた四人って俺達の事か・・・?
人間じゃない奴って・・・ しかも死にかけ・・・? まさか・・・。
声の主が誰なのかとか、何でそんな事を知っているのかとか、そんな事はどうでも良くなっていた。
姿は無くともそこに誰かが居るのは確かで、その声がシンの事を話している。
シンは今、どこに居る・・・?
ふっと静かになった中庭に、思わず立ち上がって窓に手を突いて覗き込んだ。
気配も違和感も完全に消えた中庭で、桜の花びらだけがはらはらと舞っている。
「まずいな・・・ あの不死身なあいつが・・・ 」
あのシンが未だに姿を現さないのは 弱っているから?
あいつなら俺の気配を追って来るなんて事は造作も無いはずだ。
じゃあ 本当に・・・
心臓が勝手にざわざわと騒ぎ出す。
・・・何してんだよ あの馬鹿・・・
「そうだ 気配・・・ あいつにできんだから俺にだって・・・」
いつも、どこに居てもシンから見付けられてしまう自分の居場所。
それを今度は、初めてラキの方から彼を探ってみる事にした。
気が付くとラキは大きな桜の樹の枝に卍のような格好で絡まっていた。
満開の桜の隙間から何やら白い線で楕円が描かれた広い地面が見える。
偶然鉢合わせた精霊達の魔法に巻き込まれ、ラキもカイト達と同じ世界に飛ばされていた。
『私立清城学園』のグラウンドの傍、学校をぐるっと囲むように植えられた桜の中にラキは居た。
「何だここ 建物ばっかじゃねぇか・・・ あのちっこい奴の魔法で飛ばされたのか? これ・・・現実か??」
絡まった身体を解きながら 高い枝からひらりと飛び降りる。
髪に入り込んだ無数の花びらをフルフルと頭を振って払い落とし、ポンポンと服を整えて胸に手を当てた時、
ふと何かを思い出して手を止めた。
「・・・! シン・・・! そうだ、シンは・・・!?」
ここに飛ばされる直前、自分の目の前に飛び込んできた黒い狼。
あれは確かに姿を変えたシンだった。
吸血鬼は、狼やコウモリに変身できる能力を持っている。
気配を隠して何か行動を起こす時はその姿のほうが都合がいい。
あいつ、俺に気付かれないようにこっそり付いて来てたんだ・・・。
あいつも俺と一緒に、あの魔法に巻き込まれたはず・・・
俺と同じでシンもどこかに飛ばされたかもしれない。
契約破棄して別れたのに、俺を 守ってくれた・・・のか・・・?
探さないと!
勝手に余計な事しやがって・・・。
ついでにストーカー行為をしたことも一緒に思いっ切り怒鳴ってやらないと気が済まない。
取り敢えず誰かに話を聞いてみようと、人が沢山居そうな校舎に向かって走って行った。
「変な格好の人間だらけだな・・・ 軍隊か? 何かの組織か? ガキしかいねぇみたいだけど・・・」
職員玄関から廊下に出て少し歩くと向こうから数人の生徒がふざけながら歩いてくる。
そのグループに近付いてラキから声を掛けた。
「なぁ 黒い狼知らねぇか」
「? 何? 誰だよいきなり突拍子も無い事言ったの・・・」
「は? だから体育の野嶋の胸毛が凄いって話だろ?」
「違うって! のじマンの事じゃなくて 誰か今 狼 って言っただろ」
「まぁある意味 のじマンの胸毛は狼並みだけど・・・」
「おーい・・・ 俺が見えねぇのか? ・・・ ・・・話になんねぇな」
いくら話し掛けても話が噛み合わない所か目も合わない。
他にも何人かに声を掛けて同じ質問をしてみるが、誰とも会話が成立しなかった。
何も進展が無い事に少し苛立ちながらシンを探して校舎内を歩き回る。
中庭に続く廊下に差し掛かると何やら聞き覚えのある声が聞こえてきて無意識に息を殺してしゃがみ込んだ。
声がする方へ足音を立てずに近付き、窓の隙間から中庭をそっと覗いてみる。
・・・・はぁ、 一番逢いたくない奴をまた見つけちまった・・・。
満開の桜の樹の下、あのカイトが居る。
やっぱりあいつも飛ばされてたか・・・。
誰かと何かを話しているようだが、その話している相手の姿は見えない。
「ありがとう!」
清々しいほど満面の笑みでそう叫んだカイトがくるっと向きを変えて走り出し、中庭から廊下に出ると階段目掛けてあっという間に駆けて行った。
誰か居んのか・・・?
角を曲がって消えていくカイトの背中を眺めながら再び中庭に意識を戻すと、誰も居ない大きな桜の樹の近くから声だけが聞こえてくる。
「――――――森に戻って落ちてきた四人の行く末を見守るか。そういえば一人は人間じゃなかったな」
『その人なら、弱ってて今にも死にそうだよっ、って、腰を撫でるなってばっ!――――――』
え? 今 何て言った? 落ちてきた四人って俺達の事か・・・?
人間じゃない奴って・・・ しかも死にかけ・・・? まさか・・・。
声の主が誰なのかとか、何でそんな事を知っているのかとか、そんな事はどうでも良くなっていた。
姿は無くともそこに誰かが居るのは確かで、その声がシンの事を話している。
シンは今、どこに居る・・・?
ふっと静かになった中庭に、思わず立ち上がって窓に手を突いて覗き込んだ。
気配も違和感も完全に消えた中庭で、桜の花びらだけがはらはらと舞っている。
「まずいな・・・ あの不死身なあいつが・・・ 」
あのシンが未だに姿を現さないのは 弱っているから?
あいつなら俺の気配を追って来るなんて事は造作も無いはずだ。
じゃあ 本当に・・・
心臓が勝手にざわざわと騒ぎ出す。
・・・何してんだよ あの馬鹿・・・
「そうだ 気配・・・ あいつにできんだから俺にだって・・・」
いつも、どこに居てもシンから見付けられてしまう自分の居場所。
それを今度は、初めてラキの方から彼を探ってみる事にした。