【Primaveraに降る雪】 15 アース編 はじまり
「・・・ また面倒臭ぇ事になったな・・・ どこだよここ・・・」
気付くと白い石でできた大きな門の前に立っていた。
アースは両手をコートに突っ込みながら門の外から内を眺めて空を仰いだ。
上空高くに紫紺色の雲が見える。
眉間に皺を寄せてそれを睨みつけると「ちっ・・・」と舌打ちをした。
自分の掌の中にキッカの姿は無い。
パパンとカイト、それにラキとか言う目付きの悪い黒髪の男の気配も感じない。
「色々気になることはあるが、取り敢えずこの状況を何とかしねぇとな・・・」
あの次元魔法の一番近くに居た自分がこうやって無事でいるんだから あいつらも大丈夫だろうと思うことにして、ここがどこか何が起きたのか状況を整理する事にした。
鼻先に薄紅色の花びらが舞い落ちてきて、門から溢れんばかりの桜並木に気付く。
以前訪れた街でも同じ光景を見たことがあったアースは、
「この樹・・・ ここって あのおっさんらの街か?」と疑いながら一歩足を進めた。
「でけぇ・・・ 何だこれ 城か? 要塞か? ・・・俺ん家とどっちがでけぇかな・・・」
真っ白な壁の大きな建物。正面の入り口に向かって規則正しく木々が立ち並びその全てに手入れが行き届いていて堂々とアースを迎えている。
門には『私立清城学園』と知らない文字で書いてあった。
建物の中からたくさんの人の気配がする。
ふと見上げると2階の窓から数人の人影が見えた。
日を遮るように片手で顔を覆い目を凝らす。
「ん・・・ あの服・・・ どっかで見たな ・・・
ちょっと前に脱がせて着せた覚えがある・・・ ・・・ってことは」
ここがもしあの世界なのだとしたら、もしかしたらまた・・・
だんだん頭が冴えて来て、一服しようと胸ポケットを弄った。
「っあ゛ー・・・ そうだ、煙草切れてたんだ・・・ 腹も減ったしな・・・」
こんだけでかい建物だ。煙草くらいどっかにあるだろ・・・。
それからの事はまず後回しだ。
ニコチン切れと空腹に支配されたアースは、躊躇無くズカズカと校内に入って行くのだった。
昇降口を抜けて体育館に向かう渡り廊下に出ると建物の影から話し声が聞こえてきた。
「ん?」と横目でチラッと見ると白い煙がふわっと上がる。
その煙に誘われるようにアースは体育館裏に歩いて行った。
制服姿の不良男子が数人、地べたに腰を下ろして呑気に煙草を噴かして駄弁っている。
アースはその男子生徒達の目の前にしゃがむと「よぉ」と声を掛けた。
「え? 今誰か何か言ったか?」
「? 言ってないけど・・・」
「おい 俺にも1本くれよ」
「は? まただ 何だよ 誰の声だよ・・・?」
「俺にも聞こえたぞ 誰だ? どこだ?」
「ぁあ? ・・・ あぁそうか 見えねぇのか ・・・やっぱこの世界は あいつの・・・」
前にもこんな事があった。あの時も自分の姿が他の奴には見えてなくて、あいつだけには見えて・・・。
「はいはい ガキは煙草じゃなくてママンの乳でも吸ってろ これはおにーさんが貰ってやるよ」
声の主を探してキョロキョロと辺りを見回す少年達を目の前で眺めながら、彼らが持っている煙草を箱ごと堂々と頂戴した。
いつの間にか手元から無くなった煙草に気付いて何が何だか分からず呆然とする男達を無視して嬉しそうに1本を口に咥え、自分のライターで火を点けた。
再び渡り廊下に向かうと、また同じ制服を着た男子生徒が数人通り掛かる。
片手に資料を持って何かを話しながら自分の視界を横切る三人の生徒達。
そのうちのひとりの顔を見て、アースはピタリと足を止めた。
「ん・・・ あれは・・・ ・・・ マジで居た・・・ 馬鹿ライ・・・」
二人の男子に囲まれて校舎に向かって歩いて行く見覚えのある顔。
その姿を眺めながら やっぱりここはライの世界なんだと確信する。
「・・・ この前逢った時より縮んでねぇか・・・」
前回、二度目の再会の時に比べて、三度目の今の方が何故か幼い感じがした。
「おい ラ・・・―――」
声を掛けようとその三人組に向かって数歩近付いたアースは、友達と話す彼の表情を見て再び立ち止まる。
同時に不機嫌そうな顔をして雷を睨み付けた。
「・・・ 何だよあの面・・・ へらへら笑いやがって・・・」
何なんだよ今日は・・・
駄目だ やる気無くした。
呼び止めようと上げた右腕をまたコートの中に引っ込めて彼らが通り過ぎるのを見届けると、渡り廊下を雷たちとは反対方向に歩き出す。
広く綺麗な体育館に入り、高い天井を見上げ、視線を横にずらすと隅にある大きな扉が半開きになっているのが見えた。
『体育準備室』とまた知らない字で書いてある。
それが何て書いてあるのか、どんな部屋なのか、そんな事には全く興味が無いアースは戸惑うことなく入って行った。
中には跳び箱やバスケットボール、バレーのネット等がきちんと整えられて仕舞われていて、窓から差し込む光がポカポカと暖かい。
その奥にも扉があり、ロッカーやシャワールームへと繋がっていた。
「どうせまた暫くしたら元の世界に戻んだろ・・・ 寝る」
シャワー室に落ちていた水の溜まった何かのケースを灰皿代わりに持って来る。
苛々と空腹を誤魔化す為、クルクルと巻いてあるマットを広げてそこに寝転ぶと目を瞑って無理矢理寝る事にした。
目は閉じたものの、案の定眠れるわけが無く 2本目の煙草に火を点けて日向ぼっこを始める。
半分ほど吸い終わった所で部屋の扉がガチャリと音を立ててゆっくりと開いた。
「ぁあ? ・・・」
気付くと白い石でできた大きな門の前に立っていた。
アースは両手をコートに突っ込みながら門の外から内を眺めて空を仰いだ。
上空高くに紫紺色の雲が見える。
眉間に皺を寄せてそれを睨みつけると「ちっ・・・」と舌打ちをした。
自分の掌の中にキッカの姿は無い。
パパンとカイト、それにラキとか言う目付きの悪い黒髪の男の気配も感じない。
「色々気になることはあるが、取り敢えずこの状況を何とかしねぇとな・・・」
あの次元魔法の一番近くに居た自分がこうやって無事でいるんだから あいつらも大丈夫だろうと思うことにして、ここがどこか何が起きたのか状況を整理する事にした。
鼻先に薄紅色の花びらが舞い落ちてきて、門から溢れんばかりの桜並木に気付く。
以前訪れた街でも同じ光景を見たことがあったアースは、
「この樹・・・ ここって あのおっさんらの街か?」と疑いながら一歩足を進めた。
「でけぇ・・・ 何だこれ 城か? 要塞か? ・・・俺ん家とどっちがでけぇかな・・・」
真っ白な壁の大きな建物。正面の入り口に向かって規則正しく木々が立ち並びその全てに手入れが行き届いていて堂々とアースを迎えている。
門には『私立清城学園』と知らない文字で書いてあった。
建物の中からたくさんの人の気配がする。
ふと見上げると2階の窓から数人の人影が見えた。
日を遮るように片手で顔を覆い目を凝らす。
「ん・・・ あの服・・・ どっかで見たな ・・・
ちょっと前に脱がせて着せた覚えがある・・・ ・・・ってことは」
ここがもしあの世界なのだとしたら、もしかしたらまた・・・
だんだん頭が冴えて来て、一服しようと胸ポケットを弄った。
「っあ゛ー・・・ そうだ、煙草切れてたんだ・・・ 腹も減ったしな・・・」
こんだけでかい建物だ。煙草くらいどっかにあるだろ・・・。
それからの事はまず後回しだ。
ニコチン切れと空腹に支配されたアースは、躊躇無くズカズカと校内に入って行くのだった。
昇降口を抜けて体育館に向かう渡り廊下に出ると建物の影から話し声が聞こえてきた。
「ん?」と横目でチラッと見ると白い煙がふわっと上がる。
その煙に誘われるようにアースは体育館裏に歩いて行った。
制服姿の不良男子が数人、地べたに腰を下ろして呑気に煙草を噴かして駄弁っている。
アースはその男子生徒達の目の前にしゃがむと「よぉ」と声を掛けた。
「え? 今誰か何か言ったか?」
「? 言ってないけど・・・」
「おい 俺にも1本くれよ」
「は? まただ 何だよ 誰の声だよ・・・?」
「俺にも聞こえたぞ 誰だ? どこだ?」
「ぁあ? ・・・ あぁそうか 見えねぇのか ・・・やっぱこの世界は あいつの・・・」
前にもこんな事があった。あの時も自分の姿が他の奴には見えてなくて、あいつだけには見えて・・・。
「はいはい ガキは煙草じゃなくてママンの乳でも吸ってろ これはおにーさんが貰ってやるよ」
声の主を探してキョロキョロと辺りを見回す少年達を目の前で眺めながら、彼らが持っている煙草を箱ごと堂々と頂戴した。
いつの間にか手元から無くなった煙草に気付いて何が何だか分からず呆然とする男達を無視して嬉しそうに1本を口に咥え、自分のライターで火を点けた。
再び渡り廊下に向かうと、また同じ制服を着た男子生徒が数人通り掛かる。
片手に資料を持って何かを話しながら自分の視界を横切る三人の生徒達。
そのうちのひとりの顔を見て、アースはピタリと足を止めた。
「ん・・・ あれは・・・ ・・・ マジで居た・・・ 馬鹿ライ・・・」
二人の男子に囲まれて校舎に向かって歩いて行く見覚えのある顔。
その姿を眺めながら やっぱりここはライの世界なんだと確信する。
「・・・ この前逢った時より縮んでねぇか・・・」
前回、二度目の再会の時に比べて、三度目の今の方が何故か幼い感じがした。
「おい ラ・・・―――」
声を掛けようとその三人組に向かって数歩近付いたアースは、友達と話す彼の表情を見て再び立ち止まる。
同時に不機嫌そうな顔をして雷を睨み付けた。
「・・・ 何だよあの面・・・ へらへら笑いやがって・・・」
何なんだよ今日は・・・
駄目だ やる気無くした。
呼び止めようと上げた右腕をまたコートの中に引っ込めて彼らが通り過ぎるのを見届けると、渡り廊下を雷たちとは反対方向に歩き出す。
広く綺麗な体育館に入り、高い天井を見上げ、視線を横にずらすと隅にある大きな扉が半開きになっているのが見えた。
『体育準備室』とまた知らない字で書いてある。
それが何て書いてあるのか、どんな部屋なのか、そんな事には全く興味が無いアースは戸惑うことなく入って行った。
中には跳び箱やバスケットボール、バレーのネット等がきちんと整えられて仕舞われていて、窓から差し込む光がポカポカと暖かい。
その奥にも扉があり、ロッカーやシャワールームへと繋がっていた。
「どうせまた暫くしたら元の世界に戻んだろ・・・ 寝る」
シャワー室に落ちていた水の溜まった何かのケースを灰皿代わりに持って来る。
苛々と空腹を誤魔化す為、クルクルと巻いてあるマットを広げてそこに寝転ぶと目を瞑って無理矢理寝る事にした。
目は閉じたものの、案の定眠れるわけが無く 2本目の煙草に火を点けて日向ぼっこを始める。
半分ほど吸い終わった所で部屋の扉がガチャリと音を立ててゆっくりと開いた。
「ぁあ? ・・・」