【Primaveraに降る雪】 9
「・・・ こんな事で心を乱してたら駄目だ・・・ 精神も身体ももっと強くならねぇと・・・」
街の隅にある大きな針葉樹の根元に、人目から隠れるようにして座り込むラキ。
勢いとはいえ勝手にシンとの契約を解消して、その勢いのままシンの前から去ってしまった浅はかな自分に腹を立てていた。
幼い頃、家族を失った日に出逢い、契約を交わした瞬間からずっと一緒に居てくれたシン。
彼が傍に居る事はラキにとって至極当然の事で、今まで何度喧嘩しても離れるなんて事は一度だって無かった。
あの時、お互いの気持ちを確かめ合った日から、自分の中で何かが変わってしまったのか、少しの事でイライラしてしまうのは何故なのか自分自身の事なのに分からなくて、そんな自分がますます腹立たしくて、歯を食い縛りながら両手で頭をグシャグシャと掻き回した。
「・・・自立しねぇとな ・・・ 守ってもらってばっかじゃ駄目なんだ・・・。 もうガキじゃねぇんだから・・・。」
一方的に酷い言葉を浴びせて自分からひとりになったんだ。
これを機にシンに頼らず自分の力がこの世界でどこまで通用するのか試してみるのもいいかもしれない。
「ギルド・・・ もっかい行って 何か依頼・・・。 ずっと探してるあの秘宝とかの手掛かり、ここにあるかもしんねぇしな・・・」
力無くそう呟いて静かに立ち上がると、ゆっくりと踵を返した。
その様子を、通りを挟んだ向こう側の草むらの中で、低く身を潜めた一頭の黒い狼がじ・・・っと見詰めていた。
風が無くてもゆらゆらと揺れる流れるような漆黒の毛並み、切れ長の瞳をキラリと光らせて、歩き出したラキに合わせて、音も無く一定の距離を保って後を付いて行く。
気付かれないように日陰の中を伝い歩いて建物の影に入り込み、ギルドに向かうつもりが街の外へ歩いていくラキを目を細めて見届けるとまた次の建物の影に隠れ、彼を追った。
「あれ? 外に出たぞ・・・ ギルドってどこだっけ・・・ あれ?」
街と外との境界線に立ち、ギルドを探してキョロキョロと見回す。
ふと外の草原に目をやると、何やら見覚えのある人影が見えた。
一瞬で目の色が変わるラキ。
先程までの元気の無い表情がどんどん怒りを含んで翳っていく。
ラキの顔色が変わった事に その狼もすぐに気が付いて早足で近くまで駆け寄ると、ひとつ手前の路地に入り、
乱雑に置かれたゴミ箱や酒樽、物置を踏み台にひょいひょいと駆け上がると、雨どいから屋根に渡って、建物の傍に茂る木の枝に身を隠しながら街の外を見渡した。
「キッカァッ!!! いい加減にしないか! このままだと本当に死んでしまうぞ! そしたらパパン悲しいぞ!」
「長老にパパンが怒られるから悲しいんでしょ! 放っといてよ! どう生きようとボクの自由だもん!!」
「・・・炎の精霊なのに お前冷や汗出てんぞ・・・ 死にてぇのか・・・」
「・・・アース殿 重ね重ね申し訳ありませぬ。 旅の途中でお忙しいというのに、私共のこのような些事にこれ以上御迷惑はかけられませぬ。
・・・こんな事もあろうかと私 長老からこの杖を預かって参りました。」
「ぁあ? そのセンスの悪ぃ杖がどうしたって?」
「そう このセンスのわ・・・ ゥゲホン、この煌びやかな気品溢れる高貴な杖、あの長老の魔力がたっぷり詰まっておりまして、これを使えばこの私でもそれは凄い魔法を発動することができるのです。」
「ふーん・・・」
「それって・・・ まさか・・・」
「・・・・・!?」
得意気に解説をするパパン。
気の抜けた返事であまり興味の無いアース。
その杖を見て顔色を変えるキッカ。
魔法と聞いて目を見開くカイト。
街の出入り口に立ってその様子を睨みつけるように見ているラキ。
そのやり取りを屋根の上から静かに見守る漆黒の狼。
一番近くに居たカイトがラキの気配に気付いてこちらを振り向くと、バチッと視線がかち合った。
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K氏
拍手&コメントありがとうございます(*´∀`*)
いつも遊びに来て頂いてもっかいありがとうございます(≧∇≦)
変態紳士はいつでもあなたの傍に・・・♡
飽きるまで、いいえ、飽きてもあの紳士はあなたに纏わり付くでしょう♪
ぜひぜひ罵倒してやってくださいね♪(*´ェ`*)大喜び♡
街の隅にある大きな針葉樹の根元に、人目から隠れるようにして座り込むラキ。
勢いとはいえ勝手にシンとの契約を解消して、その勢いのままシンの前から去ってしまった浅はかな自分に腹を立てていた。
幼い頃、家族を失った日に出逢い、契約を交わした瞬間からずっと一緒に居てくれたシン。
彼が傍に居る事はラキにとって至極当然の事で、今まで何度喧嘩しても離れるなんて事は一度だって無かった。
あの時、お互いの気持ちを確かめ合った日から、自分の中で何かが変わってしまったのか、少しの事でイライラしてしまうのは何故なのか自分自身の事なのに分からなくて、そんな自分がますます腹立たしくて、歯を食い縛りながら両手で頭をグシャグシャと掻き回した。
「・・・自立しねぇとな ・・・ 守ってもらってばっかじゃ駄目なんだ・・・。 もうガキじゃねぇんだから・・・。」
一方的に酷い言葉を浴びせて自分からひとりになったんだ。
これを機にシンに頼らず自分の力がこの世界でどこまで通用するのか試してみるのもいいかもしれない。
「ギルド・・・ もっかい行って 何か依頼・・・。 ずっと探してるあの秘宝とかの手掛かり、ここにあるかもしんねぇしな・・・」
力無くそう呟いて静かに立ち上がると、ゆっくりと踵を返した。
その様子を、通りを挟んだ向こう側の草むらの中で、低く身を潜めた一頭の黒い狼がじ・・・っと見詰めていた。
風が無くてもゆらゆらと揺れる流れるような漆黒の毛並み、切れ長の瞳をキラリと光らせて、歩き出したラキに合わせて、音も無く一定の距離を保って後を付いて行く。
気付かれないように日陰の中を伝い歩いて建物の影に入り込み、ギルドに向かうつもりが街の外へ歩いていくラキを目を細めて見届けるとまた次の建物の影に隠れ、彼を追った。
「あれ? 外に出たぞ・・・ ギルドってどこだっけ・・・ あれ?」
街と外との境界線に立ち、ギルドを探してキョロキョロと見回す。
ふと外の草原に目をやると、何やら見覚えのある人影が見えた。
一瞬で目の色が変わるラキ。
先程までの元気の無い表情がどんどん怒りを含んで翳っていく。
ラキの顔色が変わった事に その狼もすぐに気が付いて早足で近くまで駆け寄ると、ひとつ手前の路地に入り、
乱雑に置かれたゴミ箱や酒樽、物置を踏み台にひょいひょいと駆け上がると、雨どいから屋根に渡って、建物の傍に茂る木の枝に身を隠しながら街の外を見渡した。
「キッカァッ!!! いい加減にしないか! このままだと本当に死んでしまうぞ! そしたらパパン悲しいぞ!」
「長老にパパンが怒られるから悲しいんでしょ! 放っといてよ! どう生きようとボクの自由だもん!!」
「・・・炎の精霊なのに お前冷や汗出てんぞ・・・ 死にてぇのか・・・」
「・・・アース殿 重ね重ね申し訳ありませぬ。 旅の途中でお忙しいというのに、私共のこのような些事にこれ以上御迷惑はかけられませぬ。
・・・こんな事もあろうかと私 長老からこの杖を預かって参りました。」
「ぁあ? そのセンスの悪ぃ杖がどうしたって?」
「そう このセンスのわ・・・ ゥゲホン、この煌びやかな気品溢れる高貴な杖、あの長老の魔力がたっぷり詰まっておりまして、これを使えばこの私でもそれは凄い魔法を発動することができるのです。」
「ふーん・・・」
「それって・・・ まさか・・・」
「・・・・・!?」
得意気に解説をするパパン。
気の抜けた返事であまり興味の無いアース。
その杖を見て顔色を変えるキッカ。
魔法と聞いて目を見開くカイト。
街の出入り口に立ってその様子を睨みつけるように見ているラキ。
そのやり取りを屋根の上から静かに見守る漆黒の狼。
一番近くに居たカイトがラキの気配に気付いてこちらを振り向くと、バチッと視線がかち合った。

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