【Primaveraに降る雪】 8
街の外にある小さな森の木々の間から小さな生き物が勢いよく飛び出してきてクルクルと宙を舞う。
「キッカ・・・ 俺まだお前呼んでねぇぞ」
「あ、キッカだ・・・」
「やっと見付けたアース様♡ 全っ然呼んでくんないから自分から来ちゃったよ~!」
息を切らしながらアースの目の前でふわふわと飛ぶのは”炎の精霊キッカ”
悪徳商人に捕まって売り飛ばされそうになっている所を偶然アースが助けた事から、それ以来彼にすっかり懐いてしまった。
「勝手に出てきていいのか? くたびれてんじゃねえかよ」
「いいの!アース様に会いたかったから!平気だよ♪」
「いつもはドッジボールと同じ位の大きさなのに、今お前ハンドボール位しかねぇぞ」
「・・・何でボールで例えるの・・・ そんなにボク丸いの・・・ まあいいけどさ・・・」
アースの周りをグルグル飛び回って青い髪の中に潜り込むキッカ。
そこからひょこっと顔を出してアースに頬擦りをした。
「熱っ・・・ あちぃよお前・・・ そうだ、出てきたついでに煙草に火点けろ」
「はーい♡」
指先から小さな炎を出して、咥えた煙草の先に火を点ける。
ふたりのやり取りを黙って見ていたカイト。
キッカが火を出す所を今までに何度も見ているのに、何度も目を輝かせてそれを見てしまう。
でも、今回は何だか面白くなくて、それを無表情で見ている自分がいた。
じ・・・っと自分を見詰める視線に気付いたキッカがカイトを見る。
「・・・何だ カイトいたんだ 小さいから気付かなかった~♪」
「キッカよりおっきいのに? 相変わらずアースが好きなんだねぇ」
「・・・何? なんか元気なくね? この子ホントにカイト? 気持ち悪っ・・・ 」
「やめろキッカ いいんだよ・・・ それよりお前 そろそろ帰った方がいいんじゃねぇか」
「ぇぇえええーー・・・ ヤだ! もっとアース様と一緒に居たい! やっと探し出したのにぃー!!」
「だから言ってんだよ 長い時間こっちに居過ぎたせいで縮んでるって 用があったら俺から呼ぶから無闇に出てくんな」
「いーやーだー! カイトばっかりアース様の傍にいられてずるい! やだっ!!!」
「・・・・・・」
何だか自分は場違いな気がして、言い合いをするふたりから少しずつ遠ざかるカイト。
無理をしてまでこの世界に留まり続けようとするキッカを嗜めながら、視界から外れていくカイトを目で追う。
キッカはいつもと違う雰囲気に何となく気付いていたが、邪魔なカイトからアースを独り占めにできる今がチャンスとばかりに思いっ切りくっ付いた。
「・・・ 俺、先にご飯食べてるね・・・」
「・・・・・」
ニッコリとふたりに笑い掛けてその場から立ち去ろうとするカイト。
顔面に纏わりつくキッカを掴み上げて「お前いい加減に・・・」とアースが言い掛けた瞬間、
また遠くの方から大きな声が近付いてきた。
「こらーーーっ!!! キッカァァァァーーーッ!!! 待たんかーーーっ!!!」
「・・・・・っ!!! ぇえっ!? パ、パパンッ!!!」
「「パパンッ!!??」」
驚いて飛び上がって叫ぶキッカにつられて、カイトとアースも同時にそう繰り返して声のする方を振り返った。
「ハァ・・・ハァ・・・ 全く・・・ 逃げ足の速さだけは褒めてやる・・・ ゼェ・・・ ゼェ・・・」
「パパン! しつっこい! その粘着質な性格だけは褒めてあげる そのまま溶けて無くなればいいのに・・・」
「それ・・・ 褒めとらんぞ・・・ ゼェ・・・」
「パパンもね・・・」
キッカが飛んできた方向から、キッカの名を叫びながら飛んできたこの精霊。
アースの目の前に辿り着くと、その足元にフラフラと降りて、地面に両手を付き激しく息を切らす。
パパンと呼ばれたこの生き物。
普段のキッカより2まわりほど大きく、髪は白髪混じりでクルクルパーマ、口元には立派な白ヒゲを蓄え、
和服に近いキッカとは違って、煌びやかな貴族のような格好をしている。
首周りにはアコーディオンのような用途不明のとにかく高貴そうな襟。
腰に差してあったこれまた精巧な作りの杖を支えにして、「よっこいしょ」という掛け声と共にゆっくりと起き上がった。
「・・・・ 何だこのオッサン・・・。 これも精霊か・・・? 見た目がうぜぇな・・・」
「ボクのパパン・・・ って言っても育ての親みたいなもんだけど・・・」
「・・・・っ ・・・・っ!」
また新しい珍しいものを目の当たりにしたカイトは、言葉を発するのも忘れて瞳をキラキラさせている。
それでもアースやキッカ、おっさんの近くに寄って行く事はせずに少し遠くから眺めていた。
その様子を顔を動かさずに視界の中で確かめるアース。
「ゥゲホンッ! キッカ! お前はまた人様に迷惑かけおってっ!! さぁ!帰るぞ! こちらの方に謝りなさい!!」
「い゛ーーや゛ーーだーーっっ!!! アース様はボクの主だもん! もっと一緒に居たい゛ーーー!!!! パパン臭いー!!!」
「コラッ! 今ちらっとワシの悪口言っただろっ! 今はワシの体臭は関係無いわっ! ワシ臭くないわっ!」
「アース様いい匂い~♡ 澄んだ大空の匂い~♡ 癒される~♡」
「・・・お前 さっきよりまた少し縮んでるぞ・・・ 何も癒されてねぇから・・・」
怒鳴るパパンを無視してアースの胸ぐらに潜り込むキッカ。
少し呆れながらキッカの襟首を掴んで引き剥がそうとするとますます奥に潜り込んで行く。
「アース殿申し訳無い。 以前キッカの命を助けて頂いたにも関わらずまたこんな御迷惑を・・・。
勝手にこちらの世界に出てきてはいけないという掟を1度ならず2度も破ってしまいまして、
温厚な我が長老も頭の炎が少しありえない色に変わるという少々大変な事態になっておるのです・・・。」
「・・・・・ん、 俺は平気だけど、 長老のそれって怒ってるって事か? 炎出てる時点でもうヤバイんじゃねぇのか?」
「炎は四六時中出ておられるのですが高温になると色が変わるのです。これ以上長居はしていられませぬ。
キッカ!! もういい加減にせんかっ!! 我が侭ばっかり言ってるとパパン本当に怒るぞぉ~???」
「怒られて済むならそれでいいもん。 久し振りに逢えたんだもん。 もっと色々話したいもん。
何でボク精霊なんだよ・・・ ・・・ 人間て・・・ ズルイ・・・。」
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「キッカ・・・ 俺まだお前呼んでねぇぞ」
「あ、キッカだ・・・」
「やっと見付けたアース様♡ 全っ然呼んでくんないから自分から来ちゃったよ~!」
息を切らしながらアースの目の前でふわふわと飛ぶのは”炎の精霊キッカ”
悪徳商人に捕まって売り飛ばされそうになっている所を偶然アースが助けた事から、それ以来彼にすっかり懐いてしまった。
「勝手に出てきていいのか? くたびれてんじゃねえかよ」
「いいの!アース様に会いたかったから!平気だよ♪」
「いつもはドッジボールと同じ位の大きさなのに、今お前ハンドボール位しかねぇぞ」
「・・・何でボールで例えるの・・・ そんなにボク丸いの・・・ まあいいけどさ・・・」
アースの周りをグルグル飛び回って青い髪の中に潜り込むキッカ。
そこからひょこっと顔を出してアースに頬擦りをした。
「熱っ・・・ あちぃよお前・・・ そうだ、出てきたついでに煙草に火点けろ」
「はーい♡」
指先から小さな炎を出して、咥えた煙草の先に火を点ける。
ふたりのやり取りを黙って見ていたカイト。
キッカが火を出す所を今までに何度も見ているのに、何度も目を輝かせてそれを見てしまう。
でも、今回は何だか面白くなくて、それを無表情で見ている自分がいた。
じ・・・っと自分を見詰める視線に気付いたキッカがカイトを見る。
「・・・何だ カイトいたんだ 小さいから気付かなかった~♪」
「キッカよりおっきいのに? 相変わらずアースが好きなんだねぇ」
「・・・何? なんか元気なくね? この子ホントにカイト? 気持ち悪っ・・・ 」
「やめろキッカ いいんだよ・・・ それよりお前 そろそろ帰った方がいいんじゃねぇか」
「ぇぇえええーー・・・ ヤだ! もっとアース様と一緒に居たい! やっと探し出したのにぃー!!」
「だから言ってんだよ 長い時間こっちに居過ぎたせいで縮んでるって 用があったら俺から呼ぶから無闇に出てくんな」
「いーやーだー! カイトばっかりアース様の傍にいられてずるい! やだっ!!!」
「・・・・・・」
何だか自分は場違いな気がして、言い合いをするふたりから少しずつ遠ざかるカイト。
無理をしてまでこの世界に留まり続けようとするキッカを嗜めながら、視界から外れていくカイトを目で追う。
キッカはいつもと違う雰囲気に何となく気付いていたが、邪魔なカイトからアースを独り占めにできる今がチャンスとばかりに思いっ切りくっ付いた。
「・・・ 俺、先にご飯食べてるね・・・」
「・・・・・」
ニッコリとふたりに笑い掛けてその場から立ち去ろうとするカイト。
顔面に纏わりつくキッカを掴み上げて「お前いい加減に・・・」とアースが言い掛けた瞬間、
また遠くの方から大きな声が近付いてきた。
「こらーーーっ!!! キッカァァァァーーーッ!!! 待たんかーーーっ!!!」
「・・・・・っ!!! ぇえっ!? パ、パパンッ!!!」
「「パパンッ!!??」」
驚いて飛び上がって叫ぶキッカにつられて、カイトとアースも同時にそう繰り返して声のする方を振り返った。
「ハァ・・・ハァ・・・ 全く・・・ 逃げ足の速さだけは褒めてやる・・・ ゼェ・・・ ゼェ・・・」
「パパン! しつっこい! その粘着質な性格だけは褒めてあげる そのまま溶けて無くなればいいのに・・・」
「それ・・・ 褒めとらんぞ・・・ ゼェ・・・」
「パパンもね・・・」
キッカが飛んできた方向から、キッカの名を叫びながら飛んできたこの精霊。
アースの目の前に辿り着くと、その足元にフラフラと降りて、地面に両手を付き激しく息を切らす。
パパンと呼ばれたこの生き物。
普段のキッカより2まわりほど大きく、髪は白髪混じりでクルクルパーマ、口元には立派な白ヒゲを蓄え、
和服に近いキッカとは違って、煌びやかな貴族のような格好をしている。
首周りにはアコーディオンのような用途不明のとにかく高貴そうな襟。
腰に差してあったこれまた精巧な作りの杖を支えにして、「よっこいしょ」という掛け声と共にゆっくりと起き上がった。
「・・・・ 何だこのオッサン・・・。 これも精霊か・・・? 見た目がうぜぇな・・・」
「ボクのパパン・・・ って言っても育ての親みたいなもんだけど・・・」
「・・・・っ ・・・・っ!」
また新しい珍しいものを目の当たりにしたカイトは、言葉を発するのも忘れて瞳をキラキラさせている。
それでもアースやキッカ、おっさんの近くに寄って行く事はせずに少し遠くから眺めていた。
その様子を顔を動かさずに視界の中で確かめるアース。
「ゥゲホンッ! キッカ! お前はまた人様に迷惑かけおってっ!! さぁ!帰るぞ! こちらの方に謝りなさい!!」
「い゛ーーや゛ーーだーーっっ!!! アース様はボクの主だもん! もっと一緒に居たい゛ーーー!!!! パパン臭いー!!!」
「コラッ! 今ちらっとワシの悪口言っただろっ! 今はワシの体臭は関係無いわっ! ワシ臭くないわっ!」
「アース様いい匂い~♡ 澄んだ大空の匂い~♡ 癒される~♡」
「・・・お前 さっきよりまた少し縮んでるぞ・・・ 何も癒されてねぇから・・・」
怒鳴るパパンを無視してアースの胸ぐらに潜り込むキッカ。
少し呆れながらキッカの襟首を掴んで引き剥がそうとするとますます奥に潜り込んで行く。
「アース殿申し訳無い。 以前キッカの命を助けて頂いたにも関わらずまたこんな御迷惑を・・・。
勝手にこちらの世界に出てきてはいけないという掟を1度ならず2度も破ってしまいまして、
温厚な我が長老も頭の炎が少しありえない色に変わるという少々大変な事態になっておるのです・・・。」
「・・・・・ん、 俺は平気だけど、 長老のそれって怒ってるって事か? 炎出てる時点でもうヤバイんじゃねぇのか?」
「炎は四六時中出ておられるのですが高温になると色が変わるのです。これ以上長居はしていられませぬ。
キッカ!! もういい加減にせんかっ!! 我が侭ばっかり言ってるとパパン本当に怒るぞぉ~???」
「怒られて済むならそれでいいもん。 久し振りに逢えたんだもん。 もっと色々話したいもん。
何でボク精霊なんだよ・・・ ・・・ 人間て・・・ ズルイ・・・。」

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いつも拝見してます
- いつも拝見してます
はじめまして。いつも楽しく拝見しています。
また時間を見つけて、遊びに来させて頂きますね!
また時間を見つけて、遊びに来させて頂きますね!
Re: いつも拝見してます
- Re: いつも拝見してます
御訪問ありがとうございます!!
コメントもありがとうございます!!
お時間のある時、また是非いらしてくださいね^^
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