【Primaveraに降る雪】 3
「・・・ 眠い・・・ 眩しい・・・」
黒尽くめで日除けのグラサンを掛けた長身の男がひとり、
宿屋の食堂で遅めの朝食を摂って、手で顔を覆いながら大きく欠伸をしていた。
日課の朝の運動に出掛けるラキに、寝惚けて腹を思い切り踏まれ悶え苦しんだ後、仕方なく起きる事にしたシン。
「・・・ん、 まだあの辺りを走ってますね。 ・・・・可愛いなぁ♡」
欠伸をして目を閉じたままラキの気配を探る。
食堂の隅に腰掛けてニヤニヤと笑う怪しい様子を他の宿泊客にジロジロと見られてはっと我に返った。
「・・・ ラキが戻ってくるまでギルドで情報収集でもしてましょうか・・・」
コホンとひとつ咳払いをして宿屋の隣にあるギルドへ向かった。
゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*
「う~~ん・・・ この依頼の "おっさん妖精" って俺見た事あるような気がするなぁ どこだったかなぁ・・・」
ギルドに入ってすぐの壁に新しい依頼内容が書かれた張り紙が所狭しとびっしり貼り付けてある。
そのたくさんあるうちの一枚を眺めながら小柄な少年がうんうん唸っていた。
ラキよりも若くて小さくて、ブツブツ呟きながら柔らかい金髪がふわふわと揺れている。
「確か・・・ ここに来る途中の森にでっかい切り株があって・・・ そこの影に・・・ いや、その前の湖だったかなぁ・・・」
思い出しそうで思い出せなくて、その場で小刻みに屈伸運動をする少年。
その動きが可笑しくてついクスリと微笑むと「ん?」とこちらを振り向いた。
「あ、ごめん。 邪魔だった? 見るよね? 今朝新しく更新されたばっかだよ」
「いえ、 大丈夫ですよ。 余りにも熱心に眺めているのでつい・・・」
壁の前から離れようとする少年。 黄金色をした大きな瞳をしていて、左頬には不思議な紋様があった。
「うん、アースが向こうで他の依頼を探してくる間に、俺も何か探しとこうと思って見てたんだけど・・・」
「アース・・・? あぁ、お連れの方ですね」
少年が指差す向こう側に目をやると、建物の隅の一際薄暗い一角に数人、張り紙ではなくきちんと綴じられた本を静かに眺めているのが見える。
「・・・ あそこが そうですか・・・」と少年には聞こえないように小さく呟いてニッコリと顔を戻した。
「俺、カイト! そのグラサンかっこいいな♪ 見えてるのか? 真っ黒真っ黒!」
「私はシンといいます。 眩しいのが苦手なもので・・・。 これでもはっきり見えますよ」
カイトが目をキラキラさせてシンの瞳を覗き込んでくる。
爪先立ちで背伸びをしながら大きく目を見開いてマジマジと見詰めてくるカイトの姿が可笑しくて、シンはまたクスリと微笑んだ。
「・・・・・ぁ」
「・・・はい?」
今までニコニコしていたカイトが急に真面目な表情になる。
何かに気付いたのか、さっきよりもぐんと小さな声で聞いてきた。
「・・・・・ シンって・・・ もしかして・・・」
「・・・ ・・・ええ 人間ではありません」
次の瞬間、何倍ものキラキラを舞い散らせて満面の笑みを浮かべるカイト。
「・・・・っ!! やっぱり?」 ♪ ♬ ♪
「よく分かりましたね。 ・・・でも、貴方も少し特殊ですね。 随分久し振りに見ます。」
「??? 俺は人間だよ?」
「ええ そうですね その能力を大切にして下さい」
「??? シンって魔法使い? ひとりで来たの? シンも依頼請けに来たのか? 他にも人間じゃない奴いる? あと・・・」
珍しいものが見れた喜びと興奮で次々に質問してくるカイト。
好奇心の塊からの質問責めに少し面食らいながらも「まぁまぁ」と少年の肩をポンポンと叩いた。
他の客の邪魔になるからと、依頼書の壁から離れすぐ横のカウンターへ促すとカイトは素直にそれに応じ、シンの横にちょこんと腰掛けた。
黒尽くめで日除けのグラサンを掛けた長身の男がひとり、
宿屋の食堂で遅めの朝食を摂って、手で顔を覆いながら大きく欠伸をしていた。
日課の朝の運動に出掛けるラキに、寝惚けて腹を思い切り踏まれ悶え苦しんだ後、仕方なく起きる事にしたシン。
「・・・ん、 まだあの辺りを走ってますね。 ・・・・可愛いなぁ♡」
欠伸をして目を閉じたままラキの気配を探る。
食堂の隅に腰掛けてニヤニヤと笑う怪しい様子を他の宿泊客にジロジロと見られてはっと我に返った。
「・・・ ラキが戻ってくるまでギルドで情報収集でもしてましょうか・・・」
コホンとひとつ咳払いをして宿屋の隣にあるギルドへ向かった。
゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*
「う~~ん・・・ この依頼の "おっさん妖精" って俺見た事あるような気がするなぁ どこだったかなぁ・・・」
ギルドに入ってすぐの壁に新しい依頼内容が書かれた張り紙が所狭しとびっしり貼り付けてある。
そのたくさんあるうちの一枚を眺めながら小柄な少年がうんうん唸っていた。
ラキよりも若くて小さくて、ブツブツ呟きながら柔らかい金髪がふわふわと揺れている。
「確か・・・ ここに来る途中の森にでっかい切り株があって・・・ そこの影に・・・ いや、その前の湖だったかなぁ・・・」
思い出しそうで思い出せなくて、その場で小刻みに屈伸運動をする少年。
その動きが可笑しくてついクスリと微笑むと「ん?」とこちらを振り向いた。
「あ、ごめん。 邪魔だった? 見るよね? 今朝新しく更新されたばっかだよ」
「いえ、 大丈夫ですよ。 余りにも熱心に眺めているのでつい・・・」
壁の前から離れようとする少年。 黄金色をした大きな瞳をしていて、左頬には不思議な紋様があった。
「うん、アースが向こうで他の依頼を探してくる間に、俺も何か探しとこうと思って見てたんだけど・・・」
「アース・・・? あぁ、お連れの方ですね」
少年が指差す向こう側に目をやると、建物の隅の一際薄暗い一角に数人、張り紙ではなくきちんと綴じられた本を静かに眺めているのが見える。
「・・・ あそこが そうですか・・・」と少年には聞こえないように小さく呟いてニッコリと顔を戻した。
「俺、カイト! そのグラサンかっこいいな♪ 見えてるのか? 真っ黒真っ黒!」
「私はシンといいます。 眩しいのが苦手なもので・・・。 これでもはっきり見えますよ」
カイトが目をキラキラさせてシンの瞳を覗き込んでくる。
爪先立ちで背伸びをしながら大きく目を見開いてマジマジと見詰めてくるカイトの姿が可笑しくて、シンはまたクスリと微笑んだ。
「・・・・・ぁ」
「・・・はい?」
今までニコニコしていたカイトが急に真面目な表情になる。
何かに気付いたのか、さっきよりもぐんと小さな声で聞いてきた。
「・・・・・ シンって・・・ もしかして・・・」
「・・・ ・・・ええ 人間ではありません」
次の瞬間、何倍ものキラキラを舞い散らせて満面の笑みを浮かべるカイト。
「・・・・っ!! やっぱり?」 ♪ ♬ ♪
「よく分かりましたね。 ・・・でも、貴方も少し特殊ですね。 随分久し振りに見ます。」
「??? 俺は人間だよ?」
「ええ そうですね その能力を大切にして下さい」
「??? シンって魔法使い? ひとりで来たの? シンも依頼請けに来たのか? 他にも人間じゃない奴いる? あと・・・」
珍しいものが見れた喜びと興奮で次々に質問してくるカイト。
好奇心の塊からの質問責めに少し面食らいながらも「まぁまぁ」と少年の肩をポンポンと叩いた。
他の客の邪魔になるからと、依頼書の壁から離れすぐ横のカウンターへ促すとカイトは素直にそれに応じ、シンの横にちょこんと腰掛けた。