【番外編】【 another x another 】アース×ラキ 再会 第1話
こちらのお話は前回 【番外編】【another x another】全12話 のその後のストーリーになっております。
「・・・・・あ」
「・・・・・、 よぉラキちゃん」
「ラキちゃん言うな 何してんだよこんなとこで」
「酒場は飲食をする所ですけど ・・・知らねぇのか?」
「そういう事じゃねぇよ 分かってるくせに恍けんな」
「ふっ・・・、お前こそ独りぼっちで何してんだ」
夜、深夜に近い時間、酒場に寄ると 見覚えのある男がカウンターでひとり、大量の飯をはべらせて晩酌をしていた。
青い髪に青い瞳、羽織っているコートも青いその男は アース と呼ばれている。
長身で体格のいいその姿は どう控え目に見てもとても目立つので、店に入って彼の後姿を捉えた瞬間思わず声が出てしまっていた。
「久し振り・・・でもねぇか、まーたお前らと旅先被ってたんだなぁ」
「まぁ・・・ 交通手段とか、治安とか、気候とか・・・色々条件に合わせて旅してれば 目的地が重なることも珍しくないだろ」
「世界は意外と狭いもんだな、 ・・・暇なら座ってかねぇ?」
「・・・・・」
俺たちは それぞれの仲間と共に旅をしている。
生まれも 育ちも 年も それぞれで、目的も当然 人それぞれ・・・
それなりに腕の立つ奴らは旅人として世界中を巡り、自分に合った生き方を探す者が多い。
アースたちの目的はよく知らないが、 俺たちの目的は まぁ、ある探し物・・・
「あいつは? 一緒じゃねぇの?金魚の糞のヘン」
「シンな 今居ねぇ」
「また喧嘩」
「違う」
「仕事か」
「でもねぇよ」
「喧嘩でも仕事でもねぇ以外に 一緒に居ない理由あんのかよ あのいつもお前にべったりのあいつが・・・」
「・・・・ ・・・月光浴」
「・・・ ん・・・?」
「この街の北にでかい山があるだろ あの麓に深い洞窟があって、一番奥の行き止まりから空まで真っ直ぐに穴が開いてるんだと」
「あー・・・ ここのガイドが言ってた言ってた 確かこの街の名所だとか」
「今夜は満月で、しかも丁度あの山の真上を通るらしい」
「ふうん・・・ それ見に行ったって?」
「ここんとこ昼間はずっと快晴で、あいつも疲れてるみたいだったからな・・・ 暗闇好きだし、なんか月の光が集まってて魔力の回復に丁度いいって言ってたから 一晩そこで休ませる事にした」
「狼男とかになったりしねぇの」
「俺と同じ事言ってんな」
「あぁ 吸血鬼だっけ」
「そうそう」
以前、自分がシンにした質問を 今度は自分が聞かされる なんて・・・
何だかおかしくて吹き出してしまう
ぶふっ・・・と漏れた息を拳で抑えて にやけるのを誤魔化すと、隣からも ふはっ・・・と息の漏れる音がした。
「カイトは仕事か」
「そ、護衛」
「ぉ、何か格好良い事やってんじゃん」
「っていう名の子守りな、金持ちの子どもが自分家の庭に現れる夜行性の動物の写真撮りたいから 誰か手伝ってくれって、目玉キラキラさせながら行った」
「あぁ、その依頼ギルドで見た そうか、カイトが行ったのか」
「見付けるの得意だし問題無ぇだろ」
確か前にもこうやってお互いの連れの話をした気が・・・
普段あまり会話をしない相手と 1対1で しかも隣同士で座るというのはやっぱり少し緊張する。
知り合いを見付け、つい流れで腰掛けてしまった事を少し後悔した。
何を話したらいいのかと必死に考えてみた所で、まずはお互いの相方の話になってしまう。 まぁ当然だ。
「・・・・・」
「・・・・・」
前は他にどんな事を話していたっけ なんてぐるぐると考えていたら 目の前にグラスを差し出されていた事に気付いてハッとする。
顔を上げると、ほんのり青いそれを揺らしながら アースが「おごる」と呟いてふっと笑った。
そうだ、前も一緒に酒を飲んだっけな・・・
受け取ったアルコールに口を付けながら再び沈黙してしまったラキ。
アースは短くなった煙草を灰皿に戻して煙を吐くと、また黙ってしまった飲み仲間を待って 残った料理に手を付けた。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
「あー まだ足りねぇや・・・」
「は?・・・って、何それ」
酒場から宿に戻ると、扉を開けた所で背後から聞き慣れない音がして振り返る。
後ろから付いて来たアースが おもむろに懐からパスタの束を取り出してそのままバリバリと噛み砕いていた。
「昼間ギルドで貰った福引券でこれ当たった」
「え、パスタってそういう食べ物だっけ? 袋から出して噛り付く奴初めて見た・・・」
「貸せ、茹でてやる」と半ば強引にそれを毟り取ると、アースが嬉しそうに「おー」と答える。
あんだけ食ってまだ食う気かと底無しの胃袋に呆れて 溜め息を吐きながら台所に向かった。
――― アースからのグラスを飲み終える頃、今夜は宿が無いと聞かされた。
急に団体の客が来たとかで、どこの宿も満室になっていて、仕方が無いからこの酒場で朝まで過ごすらしい。
前もって予約しておけばいいのに とも思ったが、アースがそんな用意のいい事をするかと考えたら・・・ 考えるだけ無駄だと思った。
泊まる所が無くても全く困る素振りも無く、当たり前のように過ごすアースを見ていたら、またそわそわと気持ちが騒ぐのを感じて、
気付いたら 「自分の部屋を貸してやる」 と言ってしまっていた。
これはあれだ、前回は俺がアースの部屋を借りたから、まだその時の礼もしてなかったし、このまま自分だけ宿に戻るのも悪い気がして、何となく放っておけなかったからなだけだ
そう 借りを 返しただけだ
ただ それだけ
「・・・・・ なぁ、さっきから思ってたけど、これどうなってんの」
「・・・あ?」
頭の中で勝手に言い訳をしながら、鍋の水がお湯になるのをじっと待っているその後ろで、いつの間にかアースもじっと俺を見下ろしていてビックリする。
俺より図体でかいくせに何でこんなに気配が無いんだよ・・・
・・・ ・・・俺がボーっとし過ぎてる所為か・・・
「この服、実際に着てんの初めて見た」
「・・・あぁ浴衣か、この辺じゃ珍しいかもしれねぇな」
「酒場ん時 他の客がお前を見てたの知ってるか」
「『浴衣』を見てたんだろ 気付いてたけど俺の故郷じゃこれが普通だからな、どうでもいい」
「なぁ、何だよこれ 何で袖こんなビラビラしてんの」
「ぁあ?」
「ビラビラさせる必要性ってあんのか?なぁ、何か入れんの?ポケット?」
「ビラビラ言うな! うるせぇ触んなよっ 何だよ急に・・・っ」
「は?お前下どうなってんの、布合わせただけで めくったらすぐ脚見えんだけど」
「やーめーろ!見んなっ!触んなって!」
突然次々と質問攻めにされて戸惑ってしまう。
いきなり後ろから覗き込まれて、真上から首筋を覗かれて・・・、アルコール交じりの吐息が降ってきて・・・、アースが動く度に青い髪が肩口を掠めていく。
何故だか分からないが、背筋がゾクゾクして慌てて距離を取った。
浴衣の隙間から覗いた脚を見ようと屈んだアースの顔は、その青い髪に遮られて窺い知ることができないが、きっといつもの通りニヤリと口角を歪めているのだろう
そう思ったら悔しくなって「メシいらねぇんだな」と片付ける振りをしたら パッと素直に離れたので「ばーか」とからかってやった。
つづく⇒【番外編】【 another x another 】アース×ラキ 再会 第2話 (23日12時頃)

「・・・・・あ」
「・・・・・、 よぉラキちゃん」
「ラキちゃん言うな 何してんだよこんなとこで」
「酒場は飲食をする所ですけど ・・・知らねぇのか?」
「そういう事じゃねぇよ 分かってるくせに恍けんな」
「ふっ・・・、お前こそ独りぼっちで何してんだ」
夜、深夜に近い時間、酒場に寄ると 見覚えのある男がカウンターでひとり、大量の飯をはべらせて晩酌をしていた。
青い髪に青い瞳、羽織っているコートも青いその男は アース と呼ばれている。
長身で体格のいいその姿は どう控え目に見てもとても目立つので、店に入って彼の後姿を捉えた瞬間思わず声が出てしまっていた。
「久し振り・・・でもねぇか、まーたお前らと旅先被ってたんだなぁ」
「まぁ・・・ 交通手段とか、治安とか、気候とか・・・色々条件に合わせて旅してれば 目的地が重なることも珍しくないだろ」
「世界は意外と狭いもんだな、 ・・・暇なら座ってかねぇ?」
「・・・・・」
俺たちは それぞれの仲間と共に旅をしている。
生まれも 育ちも 年も それぞれで、目的も当然 人それぞれ・・・
それなりに腕の立つ奴らは旅人として世界中を巡り、自分に合った生き方を探す者が多い。
アースたちの目的はよく知らないが、 俺たちの目的は まぁ、ある探し物・・・
「あいつは? 一緒じゃねぇの?金魚の糞のヘン」
「シンな 今居ねぇ」
「また喧嘩」
「違う」
「仕事か」
「でもねぇよ」
「喧嘩でも仕事でもねぇ以外に 一緒に居ない理由あんのかよ あのいつもお前にべったりのあいつが・・・」
「・・・・ ・・・月光浴」
「・・・ ん・・・?」
「この街の北にでかい山があるだろ あの麓に深い洞窟があって、一番奥の行き止まりから空まで真っ直ぐに穴が開いてるんだと」
「あー・・・ ここのガイドが言ってた言ってた 確かこの街の名所だとか」
「今夜は満月で、しかも丁度あの山の真上を通るらしい」
「ふうん・・・ それ見に行ったって?」
「ここんとこ昼間はずっと快晴で、あいつも疲れてるみたいだったからな・・・ 暗闇好きだし、なんか月の光が集まってて魔力の回復に丁度いいって言ってたから 一晩そこで休ませる事にした」
「狼男とかになったりしねぇの」
「俺と同じ事言ってんな」
「あぁ 吸血鬼だっけ」
「そうそう」
以前、自分がシンにした質問を 今度は自分が聞かされる なんて・・・
何だかおかしくて吹き出してしまう
ぶふっ・・・と漏れた息を拳で抑えて にやけるのを誤魔化すと、隣からも ふはっ・・・と息の漏れる音がした。
「カイトは仕事か」
「そ、護衛」
「ぉ、何か格好良い事やってんじゃん」
「っていう名の子守りな、金持ちの子どもが自分家の庭に現れる夜行性の動物の写真撮りたいから 誰か手伝ってくれって、目玉キラキラさせながら行った」
「あぁ、その依頼ギルドで見た そうか、カイトが行ったのか」
「見付けるの得意だし問題無ぇだろ」
確か前にもこうやってお互いの連れの話をした気が・・・
普段あまり会話をしない相手と 1対1で しかも隣同士で座るというのはやっぱり少し緊張する。
知り合いを見付け、つい流れで腰掛けてしまった事を少し後悔した。
何を話したらいいのかと必死に考えてみた所で、まずはお互いの相方の話になってしまう。 まぁ当然だ。
「・・・・・」
「・・・・・」
前は他にどんな事を話していたっけ なんてぐるぐると考えていたら 目の前にグラスを差し出されていた事に気付いてハッとする。
顔を上げると、ほんのり青いそれを揺らしながら アースが「おごる」と呟いてふっと笑った。
そうだ、前も一緒に酒を飲んだっけな・・・
受け取ったアルコールに口を付けながら再び沈黙してしまったラキ。
アースは短くなった煙草を灰皿に戻して煙を吐くと、また黙ってしまった飲み仲間を待って 残った料理に手を付けた。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
「あー まだ足りねぇや・・・」
「は?・・・って、何それ」
酒場から宿に戻ると、扉を開けた所で背後から聞き慣れない音がして振り返る。
後ろから付いて来たアースが おもむろに懐からパスタの束を取り出してそのままバリバリと噛み砕いていた。
「昼間ギルドで貰った福引券でこれ当たった」
「え、パスタってそういう食べ物だっけ? 袋から出して噛り付く奴初めて見た・・・」
「貸せ、茹でてやる」と半ば強引にそれを毟り取ると、アースが嬉しそうに「おー」と答える。
あんだけ食ってまだ食う気かと底無しの胃袋に呆れて 溜め息を吐きながら台所に向かった。
――― アースからのグラスを飲み終える頃、今夜は宿が無いと聞かされた。
急に団体の客が来たとかで、どこの宿も満室になっていて、仕方が無いからこの酒場で朝まで過ごすらしい。
前もって予約しておけばいいのに とも思ったが、アースがそんな用意のいい事をするかと考えたら・・・ 考えるだけ無駄だと思った。
泊まる所が無くても全く困る素振りも無く、当たり前のように過ごすアースを見ていたら、またそわそわと気持ちが騒ぐのを感じて、
気付いたら 「自分の部屋を貸してやる」 と言ってしまっていた。
これはあれだ、前回は俺がアースの部屋を借りたから、まだその時の礼もしてなかったし、このまま自分だけ宿に戻るのも悪い気がして、何となく放っておけなかったからなだけだ
そう 借りを 返しただけだ
ただ それだけ
「・・・・・ なぁ、さっきから思ってたけど、これどうなってんの」
「・・・あ?」
頭の中で勝手に言い訳をしながら、鍋の水がお湯になるのをじっと待っているその後ろで、いつの間にかアースもじっと俺を見下ろしていてビックリする。
俺より図体でかいくせに何でこんなに気配が無いんだよ・・・
・・・ ・・・俺がボーっとし過ぎてる所為か・・・
「この服、実際に着てんの初めて見た」
「・・・あぁ浴衣か、この辺じゃ珍しいかもしれねぇな」
「酒場ん時 他の客がお前を見てたの知ってるか」
「『浴衣』を見てたんだろ 気付いてたけど俺の故郷じゃこれが普通だからな、どうでもいい」
「なぁ、何だよこれ 何で袖こんなビラビラしてんの」
「ぁあ?」
「ビラビラさせる必要性ってあんのか?なぁ、何か入れんの?ポケット?」
「ビラビラ言うな! うるせぇ触んなよっ 何だよ急に・・・っ」
「は?お前下どうなってんの、布合わせただけで めくったらすぐ脚見えんだけど」
「やーめーろ!見んなっ!触んなって!」
突然次々と質問攻めにされて戸惑ってしまう。
いきなり後ろから覗き込まれて、真上から首筋を覗かれて・・・、アルコール交じりの吐息が降ってきて・・・、アースが動く度に青い髪が肩口を掠めていく。
何故だか分からないが、背筋がゾクゾクして慌てて距離を取った。
浴衣の隙間から覗いた脚を見ようと屈んだアースの顔は、その青い髪に遮られて窺い知ることができないが、きっといつもの通りニヤリと口角を歪めているのだろう
そう思ったら悔しくなって「メシいらねぇんだな」と片付ける振りをしたら パッと素直に離れたので「ばーか」とからかってやった。
つづく⇒【番外編】【 another x another 】アース×ラキ 再会 第2話 (23日12時頃)

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