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20話 ◆
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【トイカ】22「さて・・・、そろそろお仕事をする気になられましたか」
「・・・・・」
「ここまで話してくださったのですから、ついでにもう少しだけ御協力頂いてもよろしいかと・・・」
「さっきも言ったが金なら出せるぞ」
「・・・・・ ・・・・さっきも言った通り 占いはしない」
「弓は捨てねぇぞ」
「好きにしたらいい とにかく呪いの解き方なんて知らないんだ 今まで何度も同じ依頼を請けて何度も占ってきたからね、何度やっても同じだよ」
「まだ他に理由があるのではないですか」
「・・・・・」
「貴方はこの街では有名な占い師です。よく当たると評判だと先日街の方に教えて頂きました。きっと相当な修行を積まれて能力を磨き、恐らく今は普通の方よりも ずっと鋭い感覚をお持ちなのでしょう」
「・・・・・・」
「今日がお休みなのは何故ですか。今日もご自分の運勢を占われたのですよね、あまりよろしくない結果だったのでしょうか。無理をせず休むというのも生活においてとても大事な事ですね」
にっこりと微笑んで穏やかに話し始めるシンだったが、よく見ると真っ黒いサングラスの奥にある紅い瞳はじっと目の前の占い師を見据えている。
静かで穏やか なのにどこか威圧を感じるその雰囲気が気持ち悪い
「その占いで、知っていたのではありませんか」
「・・・・・ 何を・・・」
「私達が来る事を」
「・・・・・っ」
シンの視線に捕らえられていた占い師の顔が一瞬で青褪めた。
前で組まれた腕に鳥肌が立っているのが見える。
「今日どこかでお店を構えていれば、弓の呪いについて私達が占いを頼みに来ると分かり、急遽店を畳んだのではありませんか」
「・・・・・・・っ」
「ご自宅なら我々を回避できると判断されたようですが、意図を察せず申し訳ありませんでした」
「・・・・・、・・・・・お前 やっぱり・・・」
「はい、花の効果が抜けてすぐに気付いてくださるとは、やはり素晴らしい能力をお持ちですね」
「・・・・・っ ・・・人間じゃない奴が居たとは・・・、占いでも気付けなかったのはあの花の魔除けの所為か・・・・っ」
悔しそうにぶつぶつ呟きながら拳をギリギリと握り締める占い師。
相変わらずこいつの何でも見透かしたような言動には驚かされるが、いちいち相手にする気も今更無い
「なぁお前、俺らに会いたくなかった理由は何だよ」
「・・・・・・・」
「毎度同じ依頼で 同じ占いをすんのが面倒臭ぇからか」
「・・・・・・」
「金よりも 手間よりも 俺らの相手をしたくねぇ理由があんのか」
「・・・・・・」
なかなかに焦らしてくる占い師にイラついて、ついでにシンにも文句を言ってやる
「つかさ、てめぇも回りくどい事ばっか言ってねぇでいい加減はっきり言えよ」
「ふふふ そろそろ睨んでくださると思っていました いいですねその目」
「うるせぇふざけんな」
「しかし、あともうひと押しすれば終わりかと・・・、それに ご本人は恐らく気付いてらっしゃるのでは・・・」
「何をだよ」
「私が次に何を発言して、ご自分がどう答えるのか」
そう言って さっきから一言も喋らなくなった占い師を見下ろして薄く微笑むと、部屋の中をぐるりと見回した。
「貴方の商売道具はどちらに・・・・?」
「・・・・・っ」
「占い師にとって お仕事をする上で最も大事な道具、必ずご自分の手の届く場所に保管しているはずなのですが・・・」
「そんなん その辺に置いてあんだろ」
「・・・・・」
「貴方の占いはよく当たる。 それは勘では無く 本当に視えるからです。 道具に魔力が宿っている証拠ですね」
「・・・・・っ」
「その力を手に入れる為に 本当に一生懸命修行に励まれたのですね、このお部屋の至る所から魔力を感じます。 しかし・・・ある一点だけ、ぽっかりと穴が開いたように何も無い空間があるのです」
「・・・・・」
「貴方が常日頃 肌身離さず持っているはずの商売道具、当然どの道具よりも極めて強い魔力が宿っているはず・・・、それが感じられないのは何故でしょうか」
「・・・・・っ」
「私の魔力をあの花が隠したように、貴方の道具も上手に隠しているのでは・・・」
「・・・・・っ!」
「は??」
じわじわと追い詰められる占い師の顔は、さっきまでの生意気さも消え去り、肌色でも無くなっていく。
言葉を失くしたかのように歯を食い縛って更に黙り込む占い師に シンはまだ言葉を続けた。
「きっと慌てて仕舞い込んだのでしょうね、時間さえあれば隠したものにダミーの魔力で上書きできたのに・・・ そうされてしまえば流石の私でも気付けませんでした」
「・・・・・・」
「せっかく封印したのに、その封を解いてしまうわけにいかない・・・、だから占わない ではなく、占えないのでしょう?」
「・・・・・・っ!」
「・・・・・ お前気持ちわるっ」
べらべらとファンタジーな事を話しまくるシンに思わず本音が口を吐いた。
罵られて思わず嬉しそうな顔をする奴に真顔で返す。
「もう よろしいのでは・・・? 貴方、魔法使いですよね」
「・・・・・・ ・・・はぁ、・・・なんだ、バレてたか・・・・」
「・・・・・ お前ら気持ちわるっっ」
つづく
◆追記でコメントお返事
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テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学