【シン×ラキ】月と瞳と血と絆 3
「笑うな馬鹿、俺の血が嫌なら他の奴のでも飲めよ、・・・・俺の為に勝手に弱られるなんて迷惑だ」
ラキの体調が悪いからシンが変な気を遣って血を求めないのなら、せめて代わりに他の誰かのものでいいから今はその空腹を凌いで欲しいと思った。
吸血鬼の栄養管理なんて分からないけれど、人間みたいに何でもいいから口に入れていれば頭に血が回って少しはまともな思考に戻るんじゃないか なんて
本当は嫌なくせに
自分以外の血を求めるシンなんて見たくないくせに
でも、シンばかりが苦しい思いをするくらいならそれくらい我慢できるから
シンの事だから俺が困る事はしたくないはず、俺が迷惑だからと こう命令すればシンは言う事を聞くだろうと思い、複雑な感情を押し殺して睨み付けた。
すると 今まで薄く笑みを湛えていたシンの表情ががらりと変わり、一段低い声が耳に響いた。
「嫌です」
「・・・・・、お前マジでいい加減にしろよ・・・」
「マジで嫌ですよ。ラキ以外の血なんて欲しいと思わない」
「な・・・、だってお前、俺のは・・・」
「貴方だけが欲しい」
「だから・・・」
「私には貴方が必要なんです。貴方が居てくれたら他に何も要らない・・・」
「・・・っ 分かっ・・・・、待て、分かったから落ち着・・・」
怒った様な顔になったかと思うと、途端に苦しげにその顔を歪ませて、心臓から絞り出すような声で懇願しながらシンがラキを抱き締める。
耳元で小さく何度も 欲しい と繰り返されて胸の奥がじんと痛んだ。
「ごめんなさいラキ、ごめんね・・・・・」
「・・・・ バ・・・」
馬鹿 と言い掛けてラキはその言葉を飲み込む。
馬鹿なのは自分だ。 気付いたら1か月も経っていたのにシンが余りにも普段通りで、いつもどんなに自分の事しか考えてなかったか思い知らされる。
シンが求めてこないのは、求める必要がないからだと勝手に思い込んでいたのかもしれない。そんなはず無いのに。
丈夫な俺が体調を崩すように、もっと丈夫なシンだって苦手な陽を浴び続ければじわじわと体力を削られて体調が悪くなる事くらい分かっていた。
分かっていたのに、向こうから求められるのが普通だと、無意識に受け身になってしまっていて、それなのに求めてこない事にどこか不満を抱いて、勝手に意地になって、それなら、と知らない振りをしてしまった。
そして気付いたら1か月・・・
「・・・・・・、俺の方こそ ごめ・・・―――」
「ねぇラキ・・・、ラキがもし辛くないのなら・・・」
「・・・ん?」
「ラキが・・・嫌じゃなければ、そろそろおねだりしてもよろしいですか ・・・というかもう我慢できないので下さい」
「・・・・・っ」
「貴方の所為ですよ 貴方が欲しい・・・」
今の今までラキの血を拒んでいたシンが、今度は思い詰めた表情でぎゅうと抱き締めてくる。
「シン・・・ 苦しいって・・・」
「触れても よろしいですか」
シンの肩口に顔を埋められてぷはぁっと息を継ぐと、頬を摺り寄せながらシンが耳を甘噛みしてきた。
耳たぶに歯が当たって、同時に熱い息がかかる。
ラキの背筋がぞくりと痺れた。
もう散々触ってるじゃねぇか と悪態をつこうと思ったが、ぐっとそれを飲み込み「ん・・・」と小さく返事をする。
それだけの意味では無いのだろうという事は容易に想像できた。
「・・・・ぁぁ、そういえば・・・ こうやってお前が触ってくんのも久し振りな気がする」
「・・・ そうですね」
「いつもベタベタしてくんのに、たまに発揮するその異常な我慢強さは何なんだよ」
「待つのは得意なんです」
予想通りの答えが返ってきて、ラキは呆れながら「馬鹿じゃねぇの」と呟く。
耳の横で小さく くく・・・ とシンが自嘲して長い銀髪が揺れた。
「あぁ・・・、ずっと我慢していた分、やはり一度触れてしまったらもう無理です・・・ ラキ・・・ラキ・・・」
「い・・・ってぇよ馬鹿力っ 折れる・・・っ」
「命令してラキ・・・ 嫌なら拒否して、どうして欲しいか言って、私は・・・貴方の・・・イヌだから・・・」
「・・・・、・・・・・・、・・・・・・・・・俺も ・・・お前が欲しいよ」
ラキのその言葉を聞いたシンが全身で息をついた。
ぎゅうぎゅうとラキの身体を抱き寄せて、まだ湿った黒髪と首筋に唇を押し付けると、ラキもその背中に腕を回してシャツを握り込んだ。
つづく
月と瞳と血と絆 2 ◆ 月と瞳と血と絆 4

◆追記でどうでもいい独り言
と、いつもありがとうございますコメントお返事
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