【トイカ】 1
前回のお話【warm × tender snow】のその後のお話です。
「おい これなんかいいんじゃねぇか」
「害獣駆除? これならできそうかも うん俺これにしよかな」
立ち寄った大きな街で開催された大会で、全種目1位を獲得し念願の弓とついでに賞金も手にしたカイトとアース。
その大会から2日経った現在もまだこの街に滞在していた。
次の地へ旅立とうにもその先には大きな川があり、唯一の通行手段の北の橋が先日の嵐で決壊して修理中との事。
増水して流れも速く、船で渡るにはまだ危険という事で足止めをくらっていた。
仕方なく船が再開するまでの間、旅の資金を稼ごうと朝からギルドで依頼を探している。
同様に街から出られない他の冒険者も皆ギルドに詰め寄って広くない建物内がむさ苦しい状況に陥っていた。
周りが体格のいい猛者ばかりでカイトが益々小柄に見える。
おっさんらに囲まれて潰れそうな所をアースがひょいと引っ張り出した。
「ぼさっとすんな」
「・・・あ~ビックリした 依頼書落とすとこだった」
アースがせっかく見つけてくれた依頼書を離すまいとぎゅっと胸に抱え込むカイトの頭を引き寄せて自分のコートの中に収めてやった。
腕の下でふわふわと揺れる金髪がアースの匂いに喜んでいる。
「ばーか」と呟きながら煙草を取り出した。
「それ、新しい弓を試すのに丁度いいんじゃねぇか」
「うん 俺も使ってみたいと思ってた」
「じゃぁお前が請けてこい 受け付けは分かるな?」
「おう」
煙草を咥えてニヤリと笑うと受付まで誘導して背中をポンと押した。
カイトが終わるまでの間、他の依頼を探そうと振り返るとそこにはやはりの例のふたりが立っていて、一瞬でアースの目が死んだ。
「おや、おはようございます。朝から凄い人と熱気ですね」
「ん?・・・よお やっぱ居たか」
「・・・・・・・ お前らもまだこの街にいんのか ・・・・って事はお前らも船待ちか」
「ええ また方向が一緒のようですね」
「おいシンっ 触んな暑苦しいっ」
隣り合う男たちに愛しい人が触られないようにぎゅう・・・と抱き締めるシンと、苦しそうにもがくラキ。
ラキに殴られる度に幸せそうな表情になる一連の様を暫く無表情で見守った。
「よく当たるという占い師に見て頂いたら、私たちが探しているものが北の橋を渡った向こうにあると出たものですから 特に他に行く所も無いので今回はその占いに従ってみようかと思いまして」
「うらないし・・・」
「この街じゃあ結構有名な奴なんだと」
占いなんて胡散臭いものには全く興味が無いので、ふうんと軽く返事をして棚に目を移す。
「暇で他にやる当てもねぇならそういうのもいいんじゃねぇの」
「うわー・・・ 興味無ぇのが一瞬で分かる言動だな」
「ふふ・・・ 人それぞれですよ それでそちらはもう依頼は請けたのですか?」
「カイトが害獣駆除をやる」
「それいいな! ここにも一匹いるぞ でかい害獣が」
「ラキ~ 私は悪さしませんよ? ラキ以外には」
「報酬払えばそいつも狩ってやるぞ」
「縛り上げて街の入口にでも吊るしてやってくれ」
「羞恥プレイですか? それくらいでこの私が興奮するとでも? しますけど。」
◆追記で独り言
と、コメントお返事♫
「おい これなんかいいんじゃねぇか」
「害獣駆除? これならできそうかも うん俺これにしよかな」
立ち寄った大きな街で開催された大会で、全種目1位を獲得し念願の弓とついでに賞金も手にしたカイトとアース。
その大会から2日経った現在もまだこの街に滞在していた。
次の地へ旅立とうにもその先には大きな川があり、唯一の通行手段の北の橋が先日の嵐で決壊して修理中との事。
増水して流れも速く、船で渡るにはまだ危険という事で足止めをくらっていた。
仕方なく船が再開するまでの間、旅の資金を稼ごうと朝からギルドで依頼を探している。
同様に街から出られない他の冒険者も皆ギルドに詰め寄って広くない建物内がむさ苦しい状況に陥っていた。
周りが体格のいい猛者ばかりでカイトが益々小柄に見える。
おっさんらに囲まれて潰れそうな所をアースがひょいと引っ張り出した。
「ぼさっとすんな」
「・・・あ~ビックリした 依頼書落とすとこだった」
アースがせっかく見つけてくれた依頼書を離すまいとぎゅっと胸に抱え込むカイトの頭を引き寄せて自分のコートの中に収めてやった。
腕の下でふわふわと揺れる金髪がアースの匂いに喜んでいる。
「ばーか」と呟きながら煙草を取り出した。
「それ、新しい弓を試すのに丁度いいんじゃねぇか」
「うん 俺も使ってみたいと思ってた」
「じゃぁお前が請けてこい 受け付けは分かるな?」
「おう」
煙草を咥えてニヤリと笑うと受付まで誘導して背中をポンと押した。
カイトが終わるまでの間、他の依頼を探そうと振り返るとそこにはやはりの例のふたりが立っていて、一瞬でアースの目が死んだ。
「おや、おはようございます。朝から凄い人と熱気ですね」
「ん?・・・よお やっぱ居たか」
「・・・・・・・ お前らもまだこの街にいんのか ・・・・って事はお前らも船待ちか」
「ええ また方向が一緒のようですね」
「おいシンっ 触んな暑苦しいっ」
隣り合う男たちに愛しい人が触られないようにぎゅう・・・と抱き締めるシンと、苦しそうにもがくラキ。
ラキに殴られる度に幸せそうな表情になる一連の様を暫く無表情で見守った。
「よく当たるという占い師に見て頂いたら、私たちが探しているものが北の橋を渡った向こうにあると出たものですから 特に他に行く所も無いので今回はその占いに従ってみようかと思いまして」
「うらないし・・・」
「この街じゃあ結構有名な奴なんだと」
占いなんて胡散臭いものには全く興味が無いので、ふうんと軽く返事をして棚に目を移す。
「暇で他にやる当てもねぇならそういうのもいいんじゃねぇの」
「うわー・・・ 興味無ぇのが一瞬で分かる言動だな」
「ふふ・・・ 人それぞれですよ それでそちらはもう依頼は請けたのですか?」
「カイトが害獣駆除をやる」
「それいいな! ここにも一匹いるぞ でかい害獣が」
「ラキ~ 私は悪さしませんよ? ラキ以外には」
「報酬払えばそいつも狩ってやるぞ」
「縛り上げて街の入口にでも吊るしてやってくれ」
「羞恥プレイですか? それくらいでこの私が興奮するとでも? しますけど。」
―――――― ◆ 【トイカ】 2
◆追記で独り言
と、コメントお返事♫
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【トイカ】 2
「いた 畑荒らしてる じゃあ狩るよ」
「鹿か?猪か?」
「猪、でかい」
「あんな遠いのよく見えるな」
ギルドの依頼で害獣駆除を始めたカイトとアース。
まずは田畑を荒らす生き物を狩るために遠く離れた草むらに潜んで息を殺した。
いつものほわんとしたカイトとは打って変わって、弓を握って獲物を見定めるその眼は鋭い。
久し振りに見た少しだけ凛々しいそんな顔が面白くて、アースは獣よりもカイトを見学していた。
前にもカイトは動物を狩ったことがある。
「動物を殺すなんて可哀相でできない」とかてっきり言うと思ったけど、
「生きる為に狩るんだ 旅に出る前はよく狩りをしてたよ」と返ってきて意外と野生人で驚いた。
「イノシシ、美味しいよ♪」
「おー 後で丸ごと喰おうぜ」
「うん いっぱい獲ろう♪」
にっこりといつもの笑顔でそう言って弓を持ち直すと、大きく深呼吸をして静かに構えた。
キリキリと小気味良い弦の音がカイトの体を伝わって、しっくりと手に馴染むその感覚にゾクソクと背中が震えた。
弓を引く度に視界が開けて獲物の姿がより鮮明に、更に頭が冴えてどんどん心が落ち着いて静かになっていく。
するっと指が離れて、甲高い音を一瞬響かせると一直線に矢が飛んで行き、程無く地面に崩れ落ちる音が聞こえてきた。
「・・・・・ 凄い」
「よし、仕留めたな」
「この弓 凄い」
「ん?」
「弓を引くとなんか気持ちいい・・・」
「は?」
おかしな感想が聞こえてカイトの方を見ると、獲物を仕留めたことなんてどうでもいいと目を見開いて握った弓に釘付けになっている。
手を震わせながら恍惚状態でうっとりしていた。
大会の賞品になるくらいだからそれなりにいい品なんだろう。
自分にはよく分からないが何か弓使いが称賛するような工夫がされてるのかもしれない。
カイトが喜んでいるなら手に入れて良かった。
「アース、次っ! 次行こう。 畑とか山とかまだまだいっぱいあるから早く行こう」
「待て待て そんなに急がなくても奴らは逃げねぇよ」
「逃げるよ!」
「分かったから・・・」
「次は鹿とかもっとでかいのいないかなー 熊とか出たら面白いのに もっとこの弓試したい」
「おい 猪そのまま・・・」
早く早くとアースの手を引っ張って走り出すカイトにさすがのアースも少し戸惑ってしまう。
新しい弓をすっかり気に入ったのはいいけれど、何だか目的が変わってきてるような気がして・・・。
うわぁ!40万hitありがとうございます!ビックリした!!
◆追記でコメントお返事♪
「鹿か?猪か?」
「猪、でかい」
「あんな遠いのよく見えるな」
ギルドの依頼で害獣駆除を始めたカイトとアース。
まずは田畑を荒らす生き物を狩るために遠く離れた草むらに潜んで息を殺した。
いつものほわんとしたカイトとは打って変わって、弓を握って獲物を見定めるその眼は鋭い。
久し振りに見た少しだけ凛々しいそんな顔が面白くて、アースは獣よりもカイトを見学していた。
前にもカイトは動物を狩ったことがある。
「動物を殺すなんて可哀相でできない」とかてっきり言うと思ったけど、
「生きる為に狩るんだ 旅に出る前はよく狩りをしてたよ」と返ってきて意外と野生人で驚いた。
「イノシシ、美味しいよ♪」
「おー 後で丸ごと喰おうぜ」
「うん いっぱい獲ろう♪」
にっこりといつもの笑顔でそう言って弓を持ち直すと、大きく深呼吸をして静かに構えた。
キリキリと小気味良い弦の音がカイトの体を伝わって、しっくりと手に馴染むその感覚にゾクソクと背中が震えた。
弓を引く度に視界が開けて獲物の姿がより鮮明に、更に頭が冴えてどんどん心が落ち着いて静かになっていく。
するっと指が離れて、甲高い音を一瞬響かせると一直線に矢が飛んで行き、程無く地面に崩れ落ちる音が聞こえてきた。
「・・・・・ 凄い」
「よし、仕留めたな」
「この弓 凄い」
「ん?」
「弓を引くとなんか気持ちいい・・・」
「は?」
おかしな感想が聞こえてカイトの方を見ると、獲物を仕留めたことなんてどうでもいいと目を見開いて握った弓に釘付けになっている。
手を震わせながら恍惚状態でうっとりしていた。
大会の賞品になるくらいだからそれなりにいい品なんだろう。
自分にはよく分からないが何か弓使いが称賛するような工夫がされてるのかもしれない。
カイトが喜んでいるなら手に入れて良かった。
「アース、次っ! 次行こう。 畑とか山とかまだまだいっぱいあるから早く行こう」
「待て待て そんなに急がなくても奴らは逃げねぇよ」
「逃げるよ!」
「分かったから・・・」
「次は鹿とかもっとでかいのいないかなー 熊とか出たら面白いのに もっとこの弓試したい」
「おい 猪そのまま・・・」
早く早くとアースの手を引っ張って走り出すカイトにさすがのアースも少し戸惑ってしまう。
新しい弓をすっかり気に入ったのはいいけれど、何だか目的が変わってきてるような気がして・・・。
うわぁ!40万hitありがとうございます!ビックリした!!
◆追記でコメントお返事♪
【トイカ】 3
「おい もういいんじゃねぇか? 帰ろうぜ 俺腹減った」
「ん、待って」
「なぁ こんだけ狩れば十分だろ」
「うん、もうちょっと」
「ご近所にお裾分けしても余るくらい今晩のおかず調達してるぞ」
「うん・・・」
昼前から始めた害獣駆除の仕事が、気付けばもうすっかり日も沈んで空には星が輝いていた。
完全に新しい弓の虜になってしまったカイトが、休む間も惜しんで次々と獲物を狩っている。
途中で飽きてその辺を散歩して戻ってきたアースが、まだ帰ろうとしないカイトに呆れて声を掛けた。
薄暗いあぜ道に立って両手をポケットに突っ込んで煙草を咥えたまま、草むらに隠れるカイトの背中を眺める。
いくら呼んでもカイトはこちらを振り返ろうとはしなかった。
どんだけハマってんだよ・・・
「なぁカイト君よ 煙草切れたから宿戻ろうぜ 続きは明日やれ」
「アース先帰ってていいよ 俺もうちょっと・・・」
「寒ぃって おら、猪鍋全部喰っちまうぞ」
「うん」
何度促しても帰る気が無いらしく、カイトの生返事に少しイラついて舌打ちをした。
置いて先に帰ってもいいかとも考えたが、いつになく夢中なカイトの様子に、放っといたらこの寒空の下、朝までこのままいるかもしれないと思い、風邪でも引かれたら面倒臭いのでもう一度声を掛けてみる。
「・・カイト、これ全部で何匹狩ったんだよ喰いきれねぇよ 必要最低限でいいんだよこんなのは やり過ぎると生態系くる・・」
「分かってるよ! そんなの言われなくても知ってるようるさいなっ!!」
勢いよくこちらに振り向いて、目を疑うような剣幕でカイトが怒り出した。
突然の大声にアースの瞳が見開かれる。
「・・・・・・」
「これ最後にして帰るから、アース先行ってていい」
語尾を強めて言い放つそんなカイトを、見間違いかと改めて目を凝らしてよく見てみる。
暗くて見え辛いがあのカイトが怒っているのは確かなようだった。
明らかに大げさな動作で、ジャリっと後ろに向き直してブツブツ言っている。
「・・・・・ ・・・・・・は? ぇ、何お前、怒ってんのか」
「帰れってば! 獲物逃げちゃうだろっ!」
何だこれ・・・・ 何だこの状況・・・
あのカイトが怒ってる・・・?
今、俺 睨まれた・・・?
年中無休でほわほわしてるあのカイトに 俺 怒られた・・・?
・・・・・・・・ ???
余りにも予想外の出来事に情報処理が間に合わない。
呆気に取られて返事をするのを忘れていると、一瞬強く吹いた冷たい風に前髪を掬われて、何気なく出した手の甲に煙草の灰が当たった。
「・・・・っ」
熱くて痛い。
黒い痕が残った。
でもそのお陰で少し冷静になれたようだ。
・・・・・・・。
面白ぇ・・・。
「カイトぉ 珍しく機嫌悪ぃじゃねぇか」
「うるさいな 邪魔だから早くかえ・・・、ぅわあっ・・・!」
獲物にバレないように息を潜めて隠れてる、なんてお構い無しにザクザクと草むらに入ってカイトを抱き上げた。
突然宙に浮いて驚いたカイトが弓を振り回しながら腕の中でバタバタと暴れている。
「アース!何すんだよやめろよヤだ!!」
「俺だって嫌だね 寒いし腹減ったし煙草もねぇしつまんねぇ」
「だからさっきから帰れって言ってんじゃん!」
「ああ帰るよ、帰ってお前で遊ぶ」
「ヤだっ! 俺は帰らない! まだ仕事終わってない! 残る! 下ろせ! アース!!」
「こんだけ騒げば動物のみなさんもビックリしておうち帰っただろ どっちにしろ狩りはもう終わりだ」
どうにかしてアースの腕から抜けようと体を捻らせるカイトを肩に担ぎ直して宿に向かって歩き出す。
どう見ても様子のおかしいこいつをこのままにはしておけない。
・・・というか、こんな面白いカイトを黙って放っておくのは勿体無い。
「カイトぉ 獣臭ぇから先風呂な」
「うるさい! 触るなっ! ヤだぁーっ!!」
背中をバンバン叩かれて、髪を思い切り引っ張られても全く動じないアース。
暴れて脱げた靴をひょいと拾って、昼間通った道を街に向かって歩いて行った。
◆追記でコメントお返事
「ん、待って」
「なぁ こんだけ狩れば十分だろ」
「うん、もうちょっと」
「ご近所にお裾分けしても余るくらい今晩のおかず調達してるぞ」
「うん・・・」
昼前から始めた害獣駆除の仕事が、気付けばもうすっかり日も沈んで空には星が輝いていた。
完全に新しい弓の虜になってしまったカイトが、休む間も惜しんで次々と獲物を狩っている。
途中で飽きてその辺を散歩して戻ってきたアースが、まだ帰ろうとしないカイトに呆れて声を掛けた。
薄暗いあぜ道に立って両手をポケットに突っ込んで煙草を咥えたまま、草むらに隠れるカイトの背中を眺める。
いくら呼んでもカイトはこちらを振り返ろうとはしなかった。
どんだけハマってんだよ・・・
「なぁカイト君よ 煙草切れたから宿戻ろうぜ 続きは明日やれ」
「アース先帰ってていいよ 俺もうちょっと・・・」
「寒ぃって おら、猪鍋全部喰っちまうぞ」
「うん」
何度促しても帰る気が無いらしく、カイトの生返事に少しイラついて舌打ちをした。
置いて先に帰ってもいいかとも考えたが、いつになく夢中なカイトの様子に、放っといたらこの寒空の下、朝までこのままいるかもしれないと思い、風邪でも引かれたら面倒臭いのでもう一度声を掛けてみる。
「・・カイト、これ全部で何匹狩ったんだよ喰いきれねぇよ 必要最低限でいいんだよこんなのは やり過ぎると生態系くる・・」
「分かってるよ! そんなの言われなくても知ってるようるさいなっ!!」
勢いよくこちらに振り向いて、目を疑うような剣幕でカイトが怒り出した。
突然の大声にアースの瞳が見開かれる。
「・・・・・・」
「これ最後にして帰るから、アース先行ってていい」
語尾を強めて言い放つそんなカイトを、見間違いかと改めて目を凝らしてよく見てみる。
暗くて見え辛いがあのカイトが怒っているのは確かなようだった。
明らかに大げさな動作で、ジャリっと後ろに向き直してブツブツ言っている。
「・・・・・ ・・・・・・は? ぇ、何お前、怒ってんのか」
「帰れってば! 獲物逃げちゃうだろっ!」
何だこれ・・・・ 何だこの状況・・・
あのカイトが怒ってる・・・?
今、俺 睨まれた・・・?
年中無休でほわほわしてるあのカイトに 俺 怒られた・・・?
・・・・・・・・ ???
余りにも予想外の出来事に情報処理が間に合わない。
呆気に取られて返事をするのを忘れていると、一瞬強く吹いた冷たい風に前髪を掬われて、何気なく出した手の甲に煙草の灰が当たった。
「・・・・っ」
熱くて痛い。
黒い痕が残った。
でもそのお陰で少し冷静になれたようだ。
・・・・・・・。
面白ぇ・・・。
「カイトぉ 珍しく機嫌悪ぃじゃねぇか」
「うるさいな 邪魔だから早くかえ・・・、ぅわあっ・・・!」
獲物にバレないように息を潜めて隠れてる、なんてお構い無しにザクザクと草むらに入ってカイトを抱き上げた。
突然宙に浮いて驚いたカイトが弓を振り回しながら腕の中でバタバタと暴れている。
「アース!何すんだよやめろよヤだ!!」
「俺だって嫌だね 寒いし腹減ったし煙草もねぇしつまんねぇ」
「だからさっきから帰れって言ってんじゃん!」
「ああ帰るよ、帰ってお前で遊ぶ」
「ヤだっ! 俺は帰らない! まだ仕事終わってない! 残る! 下ろせ! アース!!」
「こんだけ騒げば動物のみなさんもビックリしておうち帰っただろ どっちにしろ狩りはもう終わりだ」
どうにかしてアースの腕から抜けようと体を捻らせるカイトを肩に担ぎ直して宿に向かって歩き出す。
どう見ても様子のおかしいこいつをこのままにはしておけない。
・・・というか、こんな面白いカイトを黙って放っておくのは勿体無い。
「カイトぉ 獣臭ぇから先風呂な」
「うるさい! 触るなっ! ヤだぁーっ!!」
背中をバンバン叩かれて、髪を思い切り引っ張られても全く動じないアース。
暴れて脱げた靴をひょいと拾って、昼間通った道を街に向かって歩いて行った。
◆追記でコメントお返事
紳士とラキがちゃんとRPGをしたらこうなるラクガキ
【トイカ】 4
泥と返り血にまみれたカイトを強引に宿まで連れ帰り、部屋に着いてもぎゃーぎゃーと喚くので服を剥いで湯船に放り込んだ。
頭の先までザブンと潜ると少し落ち着いたのかそれとも諦めたのか、顔を半分出して大人しくなった。
それでも機嫌は直らないらしく横目でじろりとこちらを見ている。
「洗ってやろうか」
「いい」
浴室の入口に寄り掛かってアースが煙草を咥えながら面白そうに話し掛けてくる。
自分の思い通りにならなくて、そのうえ力でもアースに敵わなくて、結局言われた通り風呂に入っているこの状況が気に入らない。
もっと獲物を狩れたのに、まだ疲れてないのに・・・とブツブツ文句を言っていた。
「何だまだ怒ってんのか」
「うるさいな」
「反抗期か」
「・・・ぶび」
「あ? 潜ったまんま喋んな」
「・・・ 弓、汚れたから洗う 取って」
「自分で取れー」
「取ってよ! 俺をここに入れたのアースだろ」
「取って欲しいか?」
「・・・・・いい 自分で取る」
取れと言ったりいいと言ったり忙しいカイトが弓を持って戻ってくる。
朝は綺麗な瑠璃色をしていた弓が一日中酷使されたせいですっかり汚れてしまっていた。
「今度は風呂から出ないとか言い出すんじゃねぇだろうな」
「んなわけないじゃん もうアースうるさい あっち行っててよ」
「あーそうだ、昼間獲った猪をここの親父が鍋にしてくれたから俺先に喰ってるわ のぼせんなよクソガキ」
「・・・・・・」
カイトが何を言ってもひょうひょうと上手くかわして、でも面白いのでちょっと煽ってやる。
アースが言う言葉全てが気に入らないカイトは、増々ムッとしてお湯をバシャンと叩いた。
「座れよ 美味いぞお前の獲った肉」
「・・・・・」
ようやく風呂から上がって戻ってきたかと思ったら今度は部屋の隅に立って動こうとしないので、どうやらまだこの遊びは続行中のようだ。
何がしたいのか黙って見ているとカイトが頬を膨らませて怒ってきた。
「何で先に食べてんだよ! 俺が獲ったのに! アースのバカ!」
「先に喰ってるっつったろが いいからこっち来い ここ座れ」
「ヤだ 俺が座る所は俺が決める」
「ふーん それって俺の膝の上だろ」
「違うよ! 誰が座るかそんなとこ」
「どこでもいいからはよ座れ」
綺麗になった弓を片手に、カイトはまたブツブツ言いながら部屋をぐるっと大回りしてアースの向かい側の床に座った。
いつもだったらアースの横にちょこんと座ってうへへと笑いかけてくるのに、今日は鍋とテーブルの境界線で怒りのアピールだ。
「・・・・なぁ、お前それ相当気に入ってんだな」
「・・・ん」
開けたばかりのアルコールを一口飲んで、カイトの横に置いてある瑠璃色のそれを指差した。
「別に、アースには関係無いだろ」と呟いてカイトが目の前のグラスに手を添える。
今日は一日休みなく狩りをして、更に長風呂だったのもあって気付けば喉がカラカラだ。
アースが何か言ってるけどムカつくから無視をして、注いであったジュースを一気に飲み干した。
「ん゛っ・・・! ゲホッ、ゴホケホ ケフッ・・・、ぶゎくしっ!!」
「あーあ・・・ ほれみろ」
カイトが飲んだのはアースが飲もうと注いでおいたワインだった。
自分の横に座るカイトが間違えて飲んでしまわないようにわざと離して置いておいたのに、まさかそれに一番近い場所にカイトが座るとは・・・
「ったく・・・」とため息交じりに立ち上がり、涙を浮かべて咳き込むカイトに水道の水を持ってってやる。
カイトの顔の前で水入りのコップを揺らされて、素直に受け取ろうと手を伸ばしたらひょいと逃げられ宙を掻いた。
真上に逃げた水の代わりにアースの顔が下りてきて意地悪そうにニヤリと笑う。
「顔 真っ赤」
「~~・・・」
「欲しいか?」
「・・・けほっ」
「欲しいんだろ」
「・・・・ん、」
「言わねぇと分かんねぇ 俺バカだから」
「・・・いい じぶんで・・―――っ」
「無理だろ 立てねぇよ すっかり酔ってんじゃねぇか」
「うるさい よってないさわるなバカアース」
「はいはい じゃぁこれは俺が飲もうかな~」
「ヤだ! のむっ・・・」
コップに口を付けて飲む振りをするとカイトが必死に腕を掴んできた。
何だこれ マジ面白ぇ・・・
「・・・分かったよ やるからお前もちゃんと言え」
「・・・・・・ ・・・・・・みず ちょうだい」
「言えんじゃねぇか」
「はやく」
相変らず語尾を強めてこちらを睨むカイトの頭をポンポンと叩いてもう一度ニヤリと笑う。
濡れた髪から落ちた雫が目に入ってカイトは反射的に目を瞑った。
次にアースを見ると自分にくれるはずの水をアースが飲んでいて思わず声が漏れる。
「なっ・・―――」
怒鳴ろうと口を開いた瞬間、
「んぅ・・・っ」
唇を塞がれて押し倒された。
◆追記でコメントお返事♪
頭の先までザブンと潜ると少し落ち着いたのかそれとも諦めたのか、顔を半分出して大人しくなった。
それでも機嫌は直らないらしく横目でじろりとこちらを見ている。
「洗ってやろうか」
「いい」
浴室の入口に寄り掛かってアースが煙草を咥えながら面白そうに話し掛けてくる。
自分の思い通りにならなくて、そのうえ力でもアースに敵わなくて、結局言われた通り風呂に入っているこの状況が気に入らない。
もっと獲物を狩れたのに、まだ疲れてないのに・・・とブツブツ文句を言っていた。
「何だまだ怒ってんのか」
「うるさいな」
「反抗期か」
「・・・ぶび」
「あ? 潜ったまんま喋んな」
「・・・ 弓、汚れたから洗う 取って」
「自分で取れー」
「取ってよ! 俺をここに入れたのアースだろ」
「取って欲しいか?」
「・・・・・いい 自分で取る」
取れと言ったりいいと言ったり忙しいカイトが弓を持って戻ってくる。
朝は綺麗な瑠璃色をしていた弓が一日中酷使されたせいですっかり汚れてしまっていた。
「今度は風呂から出ないとか言い出すんじゃねぇだろうな」
「んなわけないじゃん もうアースうるさい あっち行っててよ」
「あーそうだ、昼間獲った猪をここの親父が鍋にしてくれたから俺先に喰ってるわ のぼせんなよクソガキ」
「・・・・・・」
カイトが何を言ってもひょうひょうと上手くかわして、でも面白いのでちょっと煽ってやる。
アースが言う言葉全てが気に入らないカイトは、増々ムッとしてお湯をバシャンと叩いた。
「座れよ 美味いぞお前の獲った肉」
「・・・・・」
ようやく風呂から上がって戻ってきたかと思ったら今度は部屋の隅に立って動こうとしないので、どうやらまだこの遊びは続行中のようだ。
何がしたいのか黙って見ているとカイトが頬を膨らませて怒ってきた。
「何で先に食べてんだよ! 俺が獲ったのに! アースのバカ!」
「先に喰ってるっつったろが いいからこっち来い ここ座れ」
「ヤだ 俺が座る所は俺が決める」
「ふーん それって俺の膝の上だろ」
「違うよ! 誰が座るかそんなとこ」
「どこでもいいからはよ座れ」
綺麗になった弓を片手に、カイトはまたブツブツ言いながら部屋をぐるっと大回りしてアースの向かい側の床に座った。
いつもだったらアースの横にちょこんと座ってうへへと笑いかけてくるのに、今日は鍋とテーブルの境界線で怒りのアピールだ。
「・・・・なぁ、お前それ相当気に入ってんだな」
「・・・ん」
開けたばかりのアルコールを一口飲んで、カイトの横に置いてある瑠璃色のそれを指差した。
「別に、アースには関係無いだろ」と呟いてカイトが目の前のグラスに手を添える。
今日は一日休みなく狩りをして、更に長風呂だったのもあって気付けば喉がカラカラだ。
アースが何か言ってるけどムカつくから無視をして、注いであったジュースを一気に飲み干した。
「ん゛っ・・・! ゲホッ、ゴホケホ ケフッ・・・、ぶゎくしっ!!」
「あーあ・・・ ほれみろ」
カイトが飲んだのはアースが飲もうと注いでおいたワインだった。
自分の横に座るカイトが間違えて飲んでしまわないようにわざと離して置いておいたのに、まさかそれに一番近い場所にカイトが座るとは・・・
「ったく・・・」とため息交じりに立ち上がり、涙を浮かべて咳き込むカイトに水道の水を持ってってやる。
カイトの顔の前で水入りのコップを揺らされて、素直に受け取ろうと手を伸ばしたらひょいと逃げられ宙を掻いた。
真上に逃げた水の代わりにアースの顔が下りてきて意地悪そうにニヤリと笑う。
「顔 真っ赤」
「~~・・・」
「欲しいか?」
「・・・けほっ」
「欲しいんだろ」
「・・・・ん、」
「言わねぇと分かんねぇ 俺バカだから」
「・・・いい じぶんで・・―――っ」
「無理だろ 立てねぇよ すっかり酔ってんじゃねぇか」
「うるさい よってないさわるなバカアース」
「はいはい じゃぁこれは俺が飲もうかな~」
「ヤだ! のむっ・・・」
コップに口を付けて飲む振りをするとカイトが必死に腕を掴んできた。
何だこれ マジ面白ぇ・・・
「・・・分かったよ やるからお前もちゃんと言え」
「・・・・・・ ・・・・・・みず ちょうだい」
「言えんじゃねぇか」
「はやく」
相変らず語尾を強めてこちらを睨むカイトの頭をポンポンと叩いてもう一度ニヤリと笑う。
濡れた髪から落ちた雫が目に入ってカイトは反射的に目を瞑った。
次にアースを見ると自分にくれるはずの水をアースが飲んでいて思わず声が漏れる。
「なっ・・―――」
怒鳴ろうと口を開いた瞬間、
「んぅ・・・っ」
唇を塞がれて押し倒された。
◆追記でコメントお返事♪