【Primaveraに降る雪】 10
「・・・・あ、 シンのマスターだ。」
「・・・・・・」
カイトの口からシンの名が出てぶわっと頭に血が昇る。
ラキがここに居るということは、シンも近くに居るかもしれないと思ったカイトが、ラキの後ろや周りをウロウロと探しだした。
そのカイトに更にイラついたラキは、「いねぇよ!」と吐き捨てるように言い放った。
「ぇ・・・、 ぁ・・・ そか・・・ ごめん・・・」
「~~~~~~・・・・!」
落ち込んで謝罪の言葉を口にするカイトに、胸が急に苦しくなるのを感じて息を止めるラキ。
「なっ・・・んで! お前が 謝るんだよ!」
「・・・!? だって・・・ 何か怒ってるから・・・。
あの・・・ 俺さ、さっきシンと話ができて凄い面白かったから、後で会ったら『ありがと』って言っておいてくれるかな・・・」
言葉を詰まらせて黙るラキを恐る恐る見詰めながらゆっくりと話すカイト。
それを横目で見ていたアースは、夢中で解説を続けるパパンを無視して、自分の胸倉に潜り込んでいるキッカを無理矢理引っ張り出すと、掌に乗せて目の前まで持ち上げた。
キッカの顔を青い瞳でじ・・・っと見据えると低く落ち着いた声で話し始める。
「キッカ・・・ そんなに俺が好きか」
「えっ・・・? ・・・ 当たり前じゃん!」
「この魔法は使わないに越したことは無いのですが、今キッカの命が危ういことを考えれば致し方ありませぬ。
この杖の力でキッカを強制的に我々の世界に送還させて頂きま―――・・・」
「っせーよジジイ 俺が話してんだろが・・・」
「――ぇえっ!? 何とっ・・・!! ここ大事な台詞・・・ ワシの・・・ 」
「好きな人と一緒に居たいのは当たり前でしょ! ちょっとくらい苦しくても平気だもんっ! ボク、アース様好きだもん!
カイトなんかよりずっとずっと好きだもん!!!! アース様と一緒に居られるなら何でもするもん!!!!」
「・・・そうか、 なら死ぬしかねぇな・・・」
「・・・っ!!」
「・・・命を粗末にする奴って嫌いなんだよ。 主の言う事きかねぇ奴も同じだ。 いつまでもお前に付き合ってやれるほど俺も暇じゃねぇし。 ・・・そんなに死にてぇなら ・・・俺が殺してやるよ」
凍りつくような低い声がキッカを包み込む。
アースの掌の上で、驚いて固まるキッカをもう片方の手でそっと握った。
獲物を睨みつけて逃がさないように、静かに笑いながらその手に力を込めていくアースを見てその場に居た全員の表情が一変した。
「なーりーまーせーぬー!!!!! アース殿お止めくだされ!! キッカァー!! 逃げんか!! 握り潰されるぞ!!」
「アース!! 駄目だよっ!」
「何してんだあいつっ! 精霊殺す気かっ!」
「まずい・・・! こうなったらこの杖の魔法でキッカを我々の世界へ・・・っ!! ~~~~~~・・・!! 長老様、どうかお力をお貸しくだされっ!! ワシの子を助けてくだされっ!!」
パパンが何やらブツブツと呪文を唱えると杖の先から炎が噴き出しグルグルと渦を巻いて空へ昇っていく。
空の上で何重もの輪を作るとどんどん大きく広がって辺り一面を包み込み、次々と色を変えてドーム状になった。
バリバリと雷のような音を立てて、時折火花を散らし、その場に居たパパン、キッカ、アース、カイト、ラキを取り囲む。
そしてキッカを中心に円を描いて軌道修正すると、ぐにゃりと空間が歪んで光りだした。
「・・・・痛っ!」
「アース! キッカから離れてっ!」
「うわ・・・っ! すげぇ魔力だ・・・っ!」
「いやだーーーーっ!!! パパンなんか嫌いだーーーっ!!! カイトも嫌いだーーーっ!!!
帰らない帰らない帰らないっ!!!! アース様ぁぁあーーーーーっ!!!! い゛や゛ぁ゛ーーーーーっ!!!!!」
光と炎の嵐に包まれ、アースの掌の中でキッカが泣き叫ぶ。
いつの間にかキッカを守るように包み込んでいたアースの大きな手にぎゅっとしがみ付くと、大声で拒絶しながら全身を真っ赤に染めていく。
杖が放つ魔法とキッカの魔力が混ざり合って一層激しく光り輝き、地面が大気ごとグラグラと揺れだした。
「・・・ちっ やべぇな・・・ ・・・っ ・・・カイトっ!!」
「・・・・・っ!? ァー・・・ス・・・」
嵐の中、目の前をノイズが不規則に横切る。
嫌な予感に襲われたアースが思わず振り返ってカイトを呼ぶ。
突然名前を呼ばれて驚きながらも、その声に導かれてアースの元に駆け寄ろうとするカイト。
その行為がキッカの心を更に抉って溢れ出した魔力が一気に爆発した。
「な・・・んだよこれっ!! 何が起こってんだよっ!! おいやめろっ!!」
バチバチと光と闇を交互に繰り返しながら伸縮する次元魔法に巻き込まれるラキ。
歪んでいく空間の中で、両腕で顔を庇いながら身動きが取れないでいた。
混ざり合って異常な程膨れ上がった魔力が暴走して、足元にある岩や倒木、崩れた瓦礫が宙を舞った。
アースたちを取り囲んでグルグルと飛び回るとそのうちのひとつがラキ目掛けて方向を変えた。
「―――・・・・っ!!!」
「ラキっ・・・!!」
キッカが叫び出したと同時に ラキに向かって走り出していた狼。
飛んできた障害物より一瞬速く彼の元に辿り着くとその勢いのままラキを突き飛ばした。
「・・・・・・っ!! シン!?」
よろめきながら、自分の視界に飛び込んできた黒い狼の名を叫んだ瞬間、目映い閃光が全員を包み込んだ。
――――――・・・ 一瞬で静まり返る草原。
小さなつむじ風をひとつ残して、後は最初から誰も居なかったように さわさわと草木が涼しげに揺れていた。
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「・・・・・・」
カイトの口からシンの名が出てぶわっと頭に血が昇る。
ラキがここに居るということは、シンも近くに居るかもしれないと思ったカイトが、ラキの後ろや周りをウロウロと探しだした。
そのカイトに更にイラついたラキは、「いねぇよ!」と吐き捨てるように言い放った。
「ぇ・・・、 ぁ・・・ そか・・・ ごめん・・・」
「~~~~~~・・・・!」
落ち込んで謝罪の言葉を口にするカイトに、胸が急に苦しくなるのを感じて息を止めるラキ。
「なっ・・・んで! お前が 謝るんだよ!」
「・・・!? だって・・・ 何か怒ってるから・・・。
あの・・・ 俺さ、さっきシンと話ができて凄い面白かったから、後で会ったら『ありがと』って言っておいてくれるかな・・・」
言葉を詰まらせて黙るラキを恐る恐る見詰めながらゆっくりと話すカイト。
それを横目で見ていたアースは、夢中で解説を続けるパパンを無視して、自分の胸倉に潜り込んでいるキッカを無理矢理引っ張り出すと、掌に乗せて目の前まで持ち上げた。
キッカの顔を青い瞳でじ・・・っと見据えると低く落ち着いた声で話し始める。
「キッカ・・・ そんなに俺が好きか」
「えっ・・・? ・・・ 当たり前じゃん!」
「この魔法は使わないに越したことは無いのですが、今キッカの命が危ういことを考えれば致し方ありませぬ。
この杖の力でキッカを強制的に我々の世界に送還させて頂きま―――・・・」
「っせーよジジイ 俺が話してんだろが・・・」
「――ぇえっ!? 何とっ・・・!! ここ大事な台詞・・・ ワシの・・・ 」
「好きな人と一緒に居たいのは当たり前でしょ! ちょっとくらい苦しくても平気だもんっ! ボク、アース様好きだもん!
カイトなんかよりずっとずっと好きだもん!!!! アース様と一緒に居られるなら何でもするもん!!!!」
「・・・そうか、 なら死ぬしかねぇな・・・」
「・・・っ!!」
「・・・命を粗末にする奴って嫌いなんだよ。 主の言う事きかねぇ奴も同じだ。 いつまでもお前に付き合ってやれるほど俺も暇じゃねぇし。 ・・・そんなに死にてぇなら ・・・俺が殺してやるよ」
凍りつくような低い声がキッカを包み込む。
アースの掌の上で、驚いて固まるキッカをもう片方の手でそっと握った。
獲物を睨みつけて逃がさないように、静かに笑いながらその手に力を込めていくアースを見てその場に居た全員の表情が一変した。
「なーりーまーせーぬー!!!!! アース殿お止めくだされ!! キッカァー!! 逃げんか!! 握り潰されるぞ!!」
「アース!! 駄目だよっ!」
「何してんだあいつっ! 精霊殺す気かっ!」
「まずい・・・! こうなったらこの杖の魔法でキッカを我々の世界へ・・・っ!! ~~~~~~・・・!! 長老様、どうかお力をお貸しくだされっ!! ワシの子を助けてくだされっ!!」
パパンが何やらブツブツと呪文を唱えると杖の先から炎が噴き出しグルグルと渦を巻いて空へ昇っていく。
空の上で何重もの輪を作るとどんどん大きく広がって辺り一面を包み込み、次々と色を変えてドーム状になった。
バリバリと雷のような音を立てて、時折火花を散らし、その場に居たパパン、キッカ、アース、カイト、ラキを取り囲む。
そしてキッカを中心に円を描いて軌道修正すると、ぐにゃりと空間が歪んで光りだした。
「・・・・痛っ!」
「アース! キッカから離れてっ!」
「うわ・・・っ! すげぇ魔力だ・・・っ!」
「いやだーーーーっ!!! パパンなんか嫌いだーーーっ!!! カイトも嫌いだーーーっ!!!
帰らない帰らない帰らないっ!!!! アース様ぁぁあーーーーーっ!!!! い゛や゛ぁ゛ーーーーーっ!!!!!」
光と炎の嵐に包まれ、アースの掌の中でキッカが泣き叫ぶ。
いつの間にかキッカを守るように包み込んでいたアースの大きな手にぎゅっとしがみ付くと、大声で拒絶しながら全身を真っ赤に染めていく。
杖が放つ魔法とキッカの魔力が混ざり合って一層激しく光り輝き、地面が大気ごとグラグラと揺れだした。
「・・・ちっ やべぇな・・・ ・・・っ ・・・カイトっ!!」
「・・・・・っ!? ァー・・・ス・・・」
嵐の中、目の前をノイズが不規則に横切る。
嫌な予感に襲われたアースが思わず振り返ってカイトを呼ぶ。
突然名前を呼ばれて驚きながらも、その声に導かれてアースの元に駆け寄ろうとするカイト。
その行為がキッカの心を更に抉って溢れ出した魔力が一気に爆発した。
「な・・・んだよこれっ!! 何が起こってんだよっ!! おいやめろっ!!」
バチバチと光と闇を交互に繰り返しながら伸縮する次元魔法に巻き込まれるラキ。
歪んでいく空間の中で、両腕で顔を庇いながら身動きが取れないでいた。
混ざり合って異常な程膨れ上がった魔力が暴走して、足元にある岩や倒木、崩れた瓦礫が宙を舞った。
アースたちを取り囲んでグルグルと飛び回るとそのうちのひとつがラキ目掛けて方向を変えた。
「―――・・・・っ!!!」
「ラキっ・・・!!」
キッカが叫び出したと同時に ラキに向かって走り出していた狼。
飛んできた障害物より一瞬速く彼の元に辿り着くとその勢いのままラキを突き飛ばした。
「・・・・・・っ!! シン!?」
よろめきながら、自分の視界に飛び込んできた黒い狼の名を叫んだ瞬間、目映い閃光が全員を包み込んだ。
――――――・・・ 一瞬で静まり返る草原。
小さなつむじ風をひとつ残して、後は最初から誰も居なかったように さわさわと草木が涼しげに揺れていた。

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【Primaveraに降る雪】 11 カイト編 はじまり
どこまでも青く澄んだ雲ひとつ無い空。
東から南にかけて一瞬光が走り、パリッと微かに音を立てるとグルグルととぐろを巻いた紫紺色の小さな雲が生まれ、そこから何かが出てきたと同時に四方に弾けて飛んでいった。
「うひょぁあっ・・・ へぶゎっ・・・!!! い゛・・・ イだっ・・・!!!」
空から降ってきたもののひとつが素っ頓狂な声を上げながら 若葉が生い茂る地面に触れるとゴロゴロと転がり大きな桜の樹に背中をぶつけてやっと動きを止める。
「イタタ・・・ え!? 何!? ・・・ここどこだ・・・???」
逆さまになったまま辺りを見回すカイト。
今まで自分が居た外の草原とは違って目の前に桜の花びらがひらひらと舞っている。
「??? あれ?? ぇと・・・ アース? キッカ? え? え??」
上を向いた足を地面に下ろして座り直し、もう一度周りを確かめる。
自分の目前には大きく枝を広げた桜の樹。その横には大小様々な石に囲まれた可愛らしい小さな池。
何が起こったのかここがどこなのか状況が把握できずにいるカイトに春の暖かい日差しが差し込んできてボーっとしてしまう。
ゆっくりと瞬きをしながらもう少し視野を広げて周りを見てみた。
「ぅゎぁ・・・ でっかい ・・・家??」
白く背の高い壁がぐるりと取り囲んでいるのに気付く。
ここはどこかの中庭らしい。
「なんか・・・ この空気 どっかで・・・ ずっと前、ちょっとだけ・・・
んん? ・・・誰か居る?」
吹き込んでくる柔らかい風にその金髪を揺らしながら、座り込んで思ったままを口にしていると視界の端に何かの気配を感じて、クルっと顔を向けた。
御訪問ありがとうございます。お待ちしておりました。
ここから、貴方様をカイト達と一緒にそれぞれのお話を巡る旅にご招待致します。
私の another warm snow◆妄想 delusion◆ と 辰城百夏様の 微熱線 ~binetuline~
この二人のブログ間を彼らと共に冒険して頂けましたら幸いでございます。
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東から南にかけて一瞬光が走り、パリッと微かに音を立てるとグルグルととぐろを巻いた紫紺色の小さな雲が生まれ、そこから何かが出てきたと同時に四方に弾けて飛んでいった。
「うひょぁあっ・・・ へぶゎっ・・・!!! い゛・・・ イだっ・・・!!!」
空から降ってきたもののひとつが素っ頓狂な声を上げながら 若葉が生い茂る地面に触れるとゴロゴロと転がり大きな桜の樹に背中をぶつけてやっと動きを止める。
「イタタ・・・ え!? 何!? ・・・ここどこだ・・・???」
逆さまになったまま辺りを見回すカイト。
今まで自分が居た外の草原とは違って目の前に桜の花びらがひらひらと舞っている。
「??? あれ?? ぇと・・・ アース? キッカ? え? え??」
上を向いた足を地面に下ろして座り直し、もう一度周りを確かめる。
自分の目前には大きく枝を広げた桜の樹。その横には大小様々な石に囲まれた可愛らしい小さな池。
何が起こったのかここがどこなのか状況が把握できずにいるカイトに春の暖かい日差しが差し込んできてボーっとしてしまう。
ゆっくりと瞬きをしながらもう少し視野を広げて周りを見てみた。
「ぅゎぁ・・・ でっかい ・・・家??」
白く背の高い壁がぐるりと取り囲んでいるのに気付く。
ここはどこかの中庭らしい。
「なんか・・・ この空気 どっかで・・・ ずっと前、ちょっとだけ・・・
んん? ・・・誰か居る?」
吹き込んでくる柔らかい風にその金髪を揺らしながら、座り込んで思ったままを口にしていると視界の端に何かの気配を感じて、クルっと顔を向けた。
御訪問ありがとうございます。お待ちしておりました。
ここから、貴方様をカイト達と一緒にそれぞれのお話を巡る旅にご招待致します。
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リクエスト【シンにターバンを巻いてみて】
【Primaveraに降る雪】 14 ラキ編 はじまり
「・・・・・何で俺、樹の上にいるんだ・・・」
気が付くとラキは大きな桜の樹の枝に卍のような格好で絡まっていた。
満開の桜の隙間から何やら白い線で楕円が描かれた広い地面が見える。
偶然鉢合わせた精霊達の魔法に巻き込まれ、ラキもカイト達と同じ世界に飛ばされていた。
『私立清城学園』のグラウンドの傍、学校をぐるっと囲むように植えられた桜の中にラキは居た。
「何だここ 建物ばっかじゃねぇか・・・ あのちっこい奴の魔法で飛ばされたのか? これ・・・現実か??」
絡まった身体を解きながら 高い枝からひらりと飛び降りる。
髪に入り込んだ無数の花びらをフルフルと頭を振って払い落とし、ポンポンと服を整えて胸に手を当てた時、
ふと何かを思い出して手を止めた。
「・・・! シン・・・! そうだ、シンは・・・!?」
ここに飛ばされる直前、自分の目の前に飛び込んできた黒い狼。
あれは確かに姿を変えたシンだった。
吸血鬼は、狼やコウモリに変身できる能力を持っている。
気配を隠して何か行動を起こす時はその姿のほうが都合がいい。
あいつ、俺に気付かれないようにこっそり付いて来てたんだ・・・。
あいつも俺と一緒に、あの魔法に巻き込まれたはず・・・
俺と同じでシンもどこかに飛ばされたかもしれない。
契約破棄して別れたのに、俺を 守ってくれた・・・のか・・・?
探さないと!
勝手に余計な事しやがって・・・。
ついでにストーカー行為をしたことも一緒に思いっ切り怒鳴ってやらないと気が済まない。
取り敢えず誰かに話を聞いてみようと、人が沢山居そうな校舎に向かって走って行った。
「変な格好の人間だらけだな・・・ 軍隊か? 何かの組織か? ガキしかいねぇみたいだけど・・・」
職員玄関から廊下に出て少し歩くと向こうから数人の生徒がふざけながら歩いてくる。
そのグループに近付いてラキから声を掛けた。
「なぁ 黒い狼知らねぇか」
「? 何? 誰だよいきなり突拍子も無い事言ったの・・・」
「は? だから体育の野嶋の胸毛が凄いって話だろ?」
「違うって! のじマンの事じゃなくて 誰か今 狼 って言っただろ」
「まぁある意味 のじマンの胸毛は狼並みだけど・・・」
「おーい・・・ 俺が見えねぇのか? ・・・ ・・・話になんねぇな」
いくら話し掛けても話が噛み合わない所か目も合わない。
他にも何人かに声を掛けて同じ質問をしてみるが、誰とも会話が成立しなかった。
何も進展が無い事に少し苛立ちながらシンを探して校舎内を歩き回る。
中庭に続く廊下に差し掛かると何やら聞き覚えのある声が聞こえてきて無意識に息を殺してしゃがみ込んだ。
声がする方へ足音を立てずに近付き、窓の隙間から中庭をそっと覗いてみる。
・・・・はぁ、 一番逢いたくない奴をまた見つけちまった・・・。
満開の桜の樹の下、あのカイトが居る。
やっぱりあいつも飛ばされてたか・・・。
誰かと何かを話しているようだが、その話している相手の姿は見えない。
「ありがとう!」
清々しいほど満面の笑みでそう叫んだカイトがくるっと向きを変えて走り出し、中庭から廊下に出ると階段目掛けてあっという間に駆けて行った。
誰か居んのか・・・?
角を曲がって消えていくカイトの背中を眺めながら再び中庭に意識を戻すと、誰も居ない大きな桜の樹の近くから声だけが聞こえてくる。
「――――――森に戻って落ちてきた四人の行く末を見守るか。そういえば一人は人間じゃなかったな」
『その人なら、弱ってて今にも死にそうだよっ、って、腰を撫でるなってばっ!――――――』
え? 今 何て言った? 落ちてきた四人って俺達の事か・・・?
人間じゃない奴って・・・ しかも死にかけ・・・? まさか・・・。
声の主が誰なのかとか、何でそんな事を知っているのかとか、そんな事はどうでも良くなっていた。
姿は無くともそこに誰かが居るのは確かで、その声がシンの事を話している。
シンは今、どこに居る・・・?
ふっと静かになった中庭に、思わず立ち上がって窓に手を突いて覗き込んだ。
気配も違和感も完全に消えた中庭で、桜の花びらだけがはらはらと舞っている。
「まずいな・・・ あの不死身なあいつが・・・ 」
あのシンが未だに姿を現さないのは 弱っているから?
あいつなら俺の気配を追って来るなんて事は造作も無いはずだ。
じゃあ 本当に・・・
心臓が勝手にざわざわと騒ぎ出す。
・・・何してんだよ あの馬鹿・・・
「そうだ 気配・・・ あいつにできんだから俺にだって・・・」
いつも、どこに居てもシンから見付けられてしまう自分の居場所。
それを今度は、初めてラキの方から彼を探ってみる事にした。
気が付くとラキは大きな桜の樹の枝に卍のような格好で絡まっていた。
満開の桜の隙間から何やら白い線で楕円が描かれた広い地面が見える。
偶然鉢合わせた精霊達の魔法に巻き込まれ、ラキもカイト達と同じ世界に飛ばされていた。
『私立清城学園』のグラウンドの傍、学校をぐるっと囲むように植えられた桜の中にラキは居た。
「何だここ 建物ばっかじゃねぇか・・・ あのちっこい奴の魔法で飛ばされたのか? これ・・・現実か??」
絡まった身体を解きながら 高い枝からひらりと飛び降りる。
髪に入り込んだ無数の花びらをフルフルと頭を振って払い落とし、ポンポンと服を整えて胸に手を当てた時、
ふと何かを思い出して手を止めた。
「・・・! シン・・・! そうだ、シンは・・・!?」
ここに飛ばされる直前、自分の目の前に飛び込んできた黒い狼。
あれは確かに姿を変えたシンだった。
吸血鬼は、狼やコウモリに変身できる能力を持っている。
気配を隠して何か行動を起こす時はその姿のほうが都合がいい。
あいつ、俺に気付かれないようにこっそり付いて来てたんだ・・・。
あいつも俺と一緒に、あの魔法に巻き込まれたはず・・・
俺と同じでシンもどこかに飛ばされたかもしれない。
契約破棄して別れたのに、俺を 守ってくれた・・・のか・・・?
探さないと!
勝手に余計な事しやがって・・・。
ついでにストーカー行為をしたことも一緒に思いっ切り怒鳴ってやらないと気が済まない。
取り敢えず誰かに話を聞いてみようと、人が沢山居そうな校舎に向かって走って行った。
「変な格好の人間だらけだな・・・ 軍隊か? 何かの組織か? ガキしかいねぇみたいだけど・・・」
職員玄関から廊下に出て少し歩くと向こうから数人の生徒がふざけながら歩いてくる。
そのグループに近付いてラキから声を掛けた。
「なぁ 黒い狼知らねぇか」
「? 何? 誰だよいきなり突拍子も無い事言ったの・・・」
「は? だから体育の野嶋の胸毛が凄いって話だろ?」
「違うって! のじマンの事じゃなくて 誰か今 狼 って言っただろ」
「まぁある意味 のじマンの胸毛は狼並みだけど・・・」
「おーい・・・ 俺が見えねぇのか? ・・・ ・・・話になんねぇな」
いくら話し掛けても話が噛み合わない所か目も合わない。
他にも何人かに声を掛けて同じ質問をしてみるが、誰とも会話が成立しなかった。
何も進展が無い事に少し苛立ちながらシンを探して校舎内を歩き回る。
中庭に続く廊下に差し掛かると何やら聞き覚えのある声が聞こえてきて無意識に息を殺してしゃがみ込んだ。
声がする方へ足音を立てずに近付き、窓の隙間から中庭をそっと覗いてみる。
・・・・はぁ、 一番逢いたくない奴をまた見つけちまった・・・。
満開の桜の樹の下、あのカイトが居る。
やっぱりあいつも飛ばされてたか・・・。
誰かと何かを話しているようだが、その話している相手の姿は見えない。
「ありがとう!」
清々しいほど満面の笑みでそう叫んだカイトがくるっと向きを変えて走り出し、中庭から廊下に出ると階段目掛けてあっという間に駆けて行った。
誰か居んのか・・・?
角を曲がって消えていくカイトの背中を眺めながら再び中庭に意識を戻すと、誰も居ない大きな桜の樹の近くから声だけが聞こえてくる。
「――――――森に戻って落ちてきた四人の行く末を見守るか。そういえば一人は人間じゃなかったな」
『その人なら、弱ってて今にも死にそうだよっ、って、腰を撫でるなってばっ!――――――』
え? 今 何て言った? 落ちてきた四人って俺達の事か・・・?
人間じゃない奴って・・・ しかも死にかけ・・・? まさか・・・。
声の主が誰なのかとか、何でそんな事を知っているのかとか、そんな事はどうでも良くなっていた。
姿は無くともそこに誰かが居るのは確かで、その声がシンの事を話している。
シンは今、どこに居る・・・?
ふっと静かになった中庭に、思わず立ち上がって窓に手を突いて覗き込んだ。
気配も違和感も完全に消えた中庭で、桜の花びらだけがはらはらと舞っている。
「まずいな・・・ あの不死身なあいつが・・・ 」
あのシンが未だに姿を現さないのは 弱っているから?
あいつなら俺の気配を追って来るなんて事は造作も無いはずだ。
じゃあ 本当に・・・
心臓が勝手にざわざわと騒ぎ出す。
・・・何してんだよ あの馬鹿・・・
「そうだ 気配・・・ あいつにできんだから俺にだって・・・」
いつも、どこに居てもシンから見付けられてしまう自分の居場所。
それを今度は、初めてラキの方から彼を探ってみる事にした。
【Primaveraに降る雪】 15 アース編 はじまり
「・・・ また面倒臭ぇ事になったな・・・ どこだよここ・・・」
気付くと白い石でできた大きな門の前に立っていた。
アースは両手をコートに突っ込みながら門の外から内を眺めて空を仰いだ。
上空高くに紫紺色の雲が見える。
眉間に皺を寄せてそれを睨みつけると「ちっ・・・」と舌打ちをした。
自分の掌の中にキッカの姿は無い。
パパンとカイト、それにラキとか言う目付きの悪い黒髪の男の気配も感じない。
「色々気になることはあるが、取り敢えずこの状況を何とかしねぇとな・・・」
あの次元魔法の一番近くに居た自分がこうやって無事でいるんだから あいつらも大丈夫だろうと思うことにして、ここがどこか何が起きたのか状況を整理する事にした。
鼻先に薄紅色の花びらが舞い落ちてきて、門から溢れんばかりの桜並木に気付く。
以前訪れた街でも同じ光景を見たことがあったアースは、
「この樹・・・ ここって あのおっさんらの街か?」と疑いながら一歩足を進めた。
「でけぇ・・・ 何だこれ 城か? 要塞か? ・・・俺ん家とどっちがでけぇかな・・・」
真っ白な壁の大きな建物。正面の入り口に向かって規則正しく木々が立ち並びその全てに手入れが行き届いていて堂々とアースを迎えている。
門には『私立清城学園』と知らない文字で書いてあった。
建物の中からたくさんの人の気配がする。
ふと見上げると2階の窓から数人の人影が見えた。
日を遮るように片手で顔を覆い目を凝らす。
「ん・・・ あの服・・・ どっかで見たな ・・・
ちょっと前に脱がせて着せた覚えがある・・・ ・・・ってことは」
ここがもしあの世界なのだとしたら、もしかしたらまた・・・
だんだん頭が冴えて来て、一服しようと胸ポケットを弄った。
「っあ゛ー・・・ そうだ、煙草切れてたんだ・・・ 腹も減ったしな・・・」
こんだけでかい建物だ。煙草くらいどっかにあるだろ・・・。
それからの事はまず後回しだ。
ニコチン切れと空腹に支配されたアースは、躊躇無くズカズカと校内に入って行くのだった。
昇降口を抜けて体育館に向かう渡り廊下に出ると建物の影から話し声が聞こえてきた。
「ん?」と横目でチラッと見ると白い煙がふわっと上がる。
その煙に誘われるようにアースは体育館裏に歩いて行った。
制服姿の不良男子が数人、地べたに腰を下ろして呑気に煙草を噴かして駄弁っている。
アースはその男子生徒達の目の前にしゃがむと「よぉ」と声を掛けた。
「え? 今誰か何か言ったか?」
「? 言ってないけど・・・」
「おい 俺にも1本くれよ」
「は? まただ 何だよ 誰の声だよ・・・?」
「俺にも聞こえたぞ 誰だ? どこだ?」
「ぁあ? ・・・ あぁそうか 見えねぇのか ・・・やっぱこの世界は あいつの・・・」
前にもこんな事があった。あの時も自分の姿が他の奴には見えてなくて、あいつだけには見えて・・・。
「はいはい ガキは煙草じゃなくてママンの乳でも吸ってろ これはおにーさんが貰ってやるよ」
声の主を探してキョロキョロと辺りを見回す少年達を目の前で眺めながら、彼らが持っている煙草を箱ごと堂々と頂戴した。
いつの間にか手元から無くなった煙草に気付いて何が何だか分からず呆然とする男達を無視して嬉しそうに1本を口に咥え、自分のライターで火を点けた。
再び渡り廊下に向かうと、また同じ制服を着た男子生徒が数人通り掛かる。
片手に資料を持って何かを話しながら自分の視界を横切る三人の生徒達。
そのうちのひとりの顔を見て、アースはピタリと足を止めた。
「ん・・・ あれは・・・ ・・・ マジで居た・・・ 馬鹿ライ・・・」
二人の男子に囲まれて校舎に向かって歩いて行く見覚えのある顔。
その姿を眺めながら やっぱりここはライの世界なんだと確信する。
「・・・ この前逢った時より縮んでねぇか・・・」
前回、二度目の再会の時に比べて、三度目の今の方が何故か幼い感じがした。
「おい ラ・・・―――」
声を掛けようとその三人組に向かって数歩近付いたアースは、友達と話す彼の表情を見て再び立ち止まる。
同時に不機嫌そうな顔をして雷を睨み付けた。
「・・・ 何だよあの面・・・ へらへら笑いやがって・・・」
何なんだよ今日は・・・
駄目だ やる気無くした。
呼び止めようと上げた右腕をまたコートの中に引っ込めて彼らが通り過ぎるのを見届けると、渡り廊下を雷たちとは反対方向に歩き出す。
広く綺麗な体育館に入り、高い天井を見上げ、視線を横にずらすと隅にある大きな扉が半開きになっているのが見えた。
『体育準備室』とまた知らない字で書いてある。
それが何て書いてあるのか、どんな部屋なのか、そんな事には全く興味が無いアースは戸惑うことなく入って行った。
中には跳び箱やバスケットボール、バレーのネット等がきちんと整えられて仕舞われていて、窓から差し込む光がポカポカと暖かい。
その奥にも扉があり、ロッカーやシャワールームへと繋がっていた。
「どうせまた暫くしたら元の世界に戻んだろ・・・ 寝る」
シャワー室に落ちていた水の溜まった何かのケースを灰皿代わりに持って来る。
苛々と空腹を誤魔化す為、クルクルと巻いてあるマットを広げてそこに寝転ぶと目を瞑って無理矢理寝る事にした。
目は閉じたものの、案の定眠れるわけが無く 2本目の煙草に火を点けて日向ぼっこを始める。
半分ほど吸い終わった所で部屋の扉がガチャリと音を立ててゆっくりと開いた。
「ぁあ? ・・・」
気付くと白い石でできた大きな門の前に立っていた。
アースは両手をコートに突っ込みながら門の外から内を眺めて空を仰いだ。
上空高くに紫紺色の雲が見える。
眉間に皺を寄せてそれを睨みつけると「ちっ・・・」と舌打ちをした。
自分の掌の中にキッカの姿は無い。
パパンとカイト、それにラキとか言う目付きの悪い黒髪の男の気配も感じない。
「色々気になることはあるが、取り敢えずこの状況を何とかしねぇとな・・・」
あの次元魔法の一番近くに居た自分がこうやって無事でいるんだから あいつらも大丈夫だろうと思うことにして、ここがどこか何が起きたのか状況を整理する事にした。
鼻先に薄紅色の花びらが舞い落ちてきて、門から溢れんばかりの桜並木に気付く。
以前訪れた街でも同じ光景を見たことがあったアースは、
「この樹・・・ ここって あのおっさんらの街か?」と疑いながら一歩足を進めた。
「でけぇ・・・ 何だこれ 城か? 要塞か? ・・・俺ん家とどっちがでけぇかな・・・」
真っ白な壁の大きな建物。正面の入り口に向かって規則正しく木々が立ち並びその全てに手入れが行き届いていて堂々とアースを迎えている。
門には『私立清城学園』と知らない文字で書いてあった。
建物の中からたくさんの人の気配がする。
ふと見上げると2階の窓から数人の人影が見えた。
日を遮るように片手で顔を覆い目を凝らす。
「ん・・・ あの服・・・ どっかで見たな ・・・
ちょっと前に脱がせて着せた覚えがある・・・ ・・・ってことは」
ここがもしあの世界なのだとしたら、もしかしたらまた・・・
だんだん頭が冴えて来て、一服しようと胸ポケットを弄った。
「っあ゛ー・・・ そうだ、煙草切れてたんだ・・・ 腹も減ったしな・・・」
こんだけでかい建物だ。煙草くらいどっかにあるだろ・・・。
それからの事はまず後回しだ。
ニコチン切れと空腹に支配されたアースは、躊躇無くズカズカと校内に入って行くのだった。
昇降口を抜けて体育館に向かう渡り廊下に出ると建物の影から話し声が聞こえてきた。
「ん?」と横目でチラッと見ると白い煙がふわっと上がる。
その煙に誘われるようにアースは体育館裏に歩いて行った。
制服姿の不良男子が数人、地べたに腰を下ろして呑気に煙草を噴かして駄弁っている。
アースはその男子生徒達の目の前にしゃがむと「よぉ」と声を掛けた。
「え? 今誰か何か言ったか?」
「? 言ってないけど・・・」
「おい 俺にも1本くれよ」
「は? まただ 何だよ 誰の声だよ・・・?」
「俺にも聞こえたぞ 誰だ? どこだ?」
「ぁあ? ・・・ あぁそうか 見えねぇのか ・・・やっぱこの世界は あいつの・・・」
前にもこんな事があった。あの時も自分の姿が他の奴には見えてなくて、あいつだけには見えて・・・。
「はいはい ガキは煙草じゃなくてママンの乳でも吸ってろ これはおにーさんが貰ってやるよ」
声の主を探してキョロキョロと辺りを見回す少年達を目の前で眺めながら、彼らが持っている煙草を箱ごと堂々と頂戴した。
いつの間にか手元から無くなった煙草に気付いて何が何だか分からず呆然とする男達を無視して嬉しそうに1本を口に咥え、自分のライターで火を点けた。
再び渡り廊下に向かうと、また同じ制服を着た男子生徒が数人通り掛かる。
片手に資料を持って何かを話しながら自分の視界を横切る三人の生徒達。
そのうちのひとりの顔を見て、アースはピタリと足を止めた。
「ん・・・ あれは・・・ ・・・ マジで居た・・・ 馬鹿ライ・・・」
二人の男子に囲まれて校舎に向かって歩いて行く見覚えのある顔。
その姿を眺めながら やっぱりここはライの世界なんだと確信する。
「・・・ この前逢った時より縮んでねぇか・・・」
前回、二度目の再会の時に比べて、三度目の今の方が何故か幼い感じがした。
「おい ラ・・・―――」
声を掛けようとその三人組に向かって数歩近付いたアースは、友達と話す彼の表情を見て再び立ち止まる。
同時に不機嫌そうな顔をして雷を睨み付けた。
「・・・ 何だよあの面・・・ へらへら笑いやがって・・・」
何なんだよ今日は・・・
駄目だ やる気無くした。
呼び止めようと上げた右腕をまたコートの中に引っ込めて彼らが通り過ぎるのを見届けると、渡り廊下を雷たちとは反対方向に歩き出す。
広く綺麗な体育館に入り、高い天井を見上げ、視線を横にずらすと隅にある大きな扉が半開きになっているのが見えた。
『体育準備室』とまた知らない字で書いてある。
それが何て書いてあるのか、どんな部屋なのか、そんな事には全く興味が無いアースは戸惑うことなく入って行った。
中には跳び箱やバスケットボール、バレーのネット等がきちんと整えられて仕舞われていて、窓から差し込む光がポカポカと暖かい。
その奥にも扉があり、ロッカーやシャワールームへと繋がっていた。
「どうせまた暫くしたら元の世界に戻んだろ・・・ 寝る」
シャワー室に落ちていた水の溜まった何かのケースを灰皿代わりに持って来る。
苛々と空腹を誤魔化す為、クルクルと巻いてあるマットを広げてそこに寝転ぶと目を瞑って無理矢理寝る事にした。
目は閉じたものの、案の定眠れるわけが無く 2本目の煙草に火を点けて日向ぼっこを始める。
半分ほど吸い終わった所で部屋の扉がガチャリと音を立ててゆっくりと開いた。
「ぁあ? ・・・」