【頂き物】【それは魔法のサングラス】
ppで小説を連載中のカワムラナルミ様より素敵小説を頂きました。
なんと私のブログに登場するラキとシンでお話を作ってくださったのです。 とても嬉しい。発狂しそうです。
ニヤニヤしてしまうお話を本当にありがとうございます。
紳士が物凄く物凄くラキを好いていてほわんとしてしまいます。 ラキも憎まれ口を叩きながらも優しくて可愛いです。
そんな甘いふたりの冒険を私と一緒に楽しみましょう。
それは魔法のサングラス
とんでもなく素敵なサングラスがあると聞いたのは、もう何年も何十年も何百年も前の話。
しかしその時の私には、心から愛する方などいませんでしたから。そんなもの必要など無いと思っていたのです。だから、スルーしていたのです。
でも、ラキ。私のマスター。
あなたに出会い、愛し愛され、あなたを心から必要とする自分に気づき、それを思い出しました。
私は、そのサングラスを探す旅に出かけたい。
***
「ラキ、私の話を聞いてくれますか?」
「聞くから、その手どけろよ。話すならちゃんと話せ。っつか触りすぎだろ」
「ああ、すみません。失礼いたしました。もう、恥ずかしがりやさんですねえ…ラキったら!」
魔物退治も一段落、町の宿屋でゆっくりねっとり甘い夜を過ごした翌朝。光に弱いシンのためにカーテンはきちんと閉めたままの、薄暗い部屋のベッドの中。
身体に残るだるさのせいでまだ寝転んだままのラキと、その隣に上半身だけ起こして座るシン。
今日もラキはかわいいですね、などと朝から甘い言葉を囁きつつ、白く長い指先で、愛しい人の髪に鼻筋にくちびるに触れていたシンはその手をぴたりと止めた。
「サングラスが、欲しいのですが」
「はあ?いっぱい持ってんだろ?」
シンは吸血鬼、当然ながら明るい場所は苦手なのでサングラスは常備している。そして近頃、旅先でこれはと思うサングラスを見つけるたびに買ってしまう謎の癖がつき、シンの荷物は今やサングラスだらけ。シン曰く自慢のサングラスコレクションだけれど、ラキにしてみればただのムダ。まあ、中にはちょっとかっこいいかも、と思ってしまうデザインのものもあるにはあるけれど。
「いえ、それが不思議なサングラスなのです。どんな眩しいものの本質も見ることができるという」
ラキが、旅の途中に荷物を増やすなんてどうかしている、と胸の中で呆れていると、シンがいつになく真面目な顔をしてそんなことを言った。
「へえ…」
「ただ、手に入れるには南の島に渡らねばならないのです」
それはちょっとおもしろいかも、とラキがシンの目を見つめると、シンはラキの髪をふわりと撫でた後、昔々に聞いた魔法のサングラスの伝説をゆっくりと語りだした。
眩しさを遮り、どんなに光あふれる場所でも吸血鬼を守ることができるだけでなく、それをかければ何事の本質まで見通せるとか、見通せないとか。人の心も読めてしまうとか、しまわないとか。大昔の吸血鬼がとある世界で見つけた不思議な鉱物を使っているとか、いないとか。
「すげえ曖昧だな」
「伝説ですからねえ」
そのサングラスは現在ふたりがいる島ではなく、そこから船で海を渡って数日かかる南の島にあるという情報を得たシンは、次の旅はぜひぜひラキとそこへ、と密かに願っていた。
南の島、と聞いたラキが少しだけ表情を緩める。
「なんかそれ、バカンスっぽいな。南の島に旅に出るってさ」
「そうですね。あ、今回はふたりの新婚旅行を兼ねてのんびり旅行、というのも良いですよ? 新婚旅行となると~…毎晩、うふふふふ♪」
「バカ! シンに必要なものを探しに行く大事な旅をするんだろ? 毎晩うふふじゃ探せねえし第一俺の身体がもたねえよ、この変態紳士」
それに新婚旅行っていつ俺たち結婚したんだよ、と少々憤りつつも、ラキは南の島への旅に魅力を感じていた。何と言っても南の島だ。イメージとして浮かぶのは、青い海、白い砂浜。忍者と吸血鬼には場違いとしか言いようがない場所、常夏ビーチ。憧れはあるけれど、何となく遠慮していた行き先。
「なあ、南の島、行ってみようぜ?」
毎晩うふふ♪なんて絶対させないが、と心に決めつつラキがそう言うと、「うわあ!」とシンは喜びの大声を上げ、がばりとラキに抱きついた。
「嬉しい♪ さすが私のマスター、話がわかりますね! じゃあじゃあ、南の島へいちゃいちゃ新婚旅行、今すぐ行きましょう!」
「だから新婚旅行じゃ…んっ…んんん~!!」
結婚してねえし! と言い返そうとするラキのくちびるに吸い付いたシンは、新婚旅行という甘い響きと魔法のサングラスを探しに行くことができるしあわせに我を忘れ、息継ぎを忘れ……
「バカっ、ほんとバカだお前!! 息しなかったら死ぬだろうがっ!!」
「ああ、ごめんなさい……(真っ赤な顔もかわいいですよ、ラキ)」
シンがはやる気持ちを抑えきれず、無理矢理ものすごく深いキスを繰り広げてしまったためにくったりと伸びてしまったラキ。その意識が戻った途端に怒鳴られたけれど、シンは嬉しくて緩む顔を隠しきれない。うふうふ、と堪えきれないその笑い声にひどく腹がたったラキは、プンと膨れてそっぽを向いた。
「もう、今日は出かけない!! 旅行はおあずけだっ」
「おあずけ……」
シンと甘い夜を過ごした翌日はいつもだけれど、身体がだるい。だけどそれでも動けることは動けるし、シンがこんなに行きたがっているのだから今すぐに旅に出てもいいかな、とラキが考えていたというのに、キスで呼吸を止めてノックアウトなんていう仕打ち。
その上、ムッとしているラキにすぐに謝ればいいものを、「おあずけ」という響きがちょっと良くてうっとりしてしまっていたがためにタイミングを逃してしまったシンは、さらにラキを怒らせてしまった。
「お前、反省しろよ。今からギルドまで走ってってこの辺の魔物ひとりで退治してから戻って来い! それまで旅行はおあずけだ、バカ!」
「おあずけ……」
またも「おあずけ」にひっかかってうっとりしてしまい、それを見て怒りが収まらなくなったラキに部屋から放り出されてしまったたシンは、愛しい人がいる部屋のドアに縋るように頬を摺り寄せて小さなため息をついた。
「…ああ、でも。こんな試練が甘い新婚旅行の前にあるのもいいかもしれませんねぇ」
特にラキのこととなればどこまでもポジティブなシン。主人に言われたとおり、宿屋から町のギルドに走っていく。朝の光は眩しいけれど、それはこの先に続く甘い時間のため。愛の力でこの町周辺の魔物をわずか数時間でちょちょいと退治して再びラキの元に戻ると、シンは驚くラキの手を取った。
「お前…早え」
「あなたのためなら何でもできるんです。さ、では、参りましょう。ふたりの愛の新婚旅行、南の島へ!」
「だから新婚旅行じゃ…」
そうしてふたりの南の島への旅は始まったのだった。
【それは魔法のサングラス】2 へ続く
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なんと私のブログに登場するラキとシンでお話を作ってくださったのです。 とても嬉しい。発狂しそうです。
ニヤニヤしてしまうお話を本当にありがとうございます。
紳士が物凄く物凄くラキを好いていてほわんとしてしまいます。 ラキも憎まれ口を叩きながらも優しくて可愛いです。
そんな甘いふたりの冒険を私と一緒に楽しみましょう。
それは魔法のサングラス
とんでもなく素敵なサングラスがあると聞いたのは、もう何年も何十年も何百年も前の話。
しかしその時の私には、心から愛する方などいませんでしたから。そんなもの必要など無いと思っていたのです。だから、スルーしていたのです。
でも、ラキ。私のマスター。
あなたに出会い、愛し愛され、あなたを心から必要とする自分に気づき、それを思い出しました。
私は、そのサングラスを探す旅に出かけたい。
***
「ラキ、私の話を聞いてくれますか?」
「聞くから、その手どけろよ。話すならちゃんと話せ。っつか触りすぎだろ」
「ああ、すみません。失礼いたしました。もう、恥ずかしがりやさんですねえ…ラキったら!」
魔物退治も一段落、町の宿屋でゆっくりねっとり甘い夜を過ごした翌朝。光に弱いシンのためにカーテンはきちんと閉めたままの、薄暗い部屋のベッドの中。
身体に残るだるさのせいでまだ寝転んだままのラキと、その隣に上半身だけ起こして座るシン。
今日もラキはかわいいですね、などと朝から甘い言葉を囁きつつ、白く長い指先で、愛しい人の髪に鼻筋にくちびるに触れていたシンはその手をぴたりと止めた。
「サングラスが、欲しいのですが」
「はあ?いっぱい持ってんだろ?」
シンは吸血鬼、当然ながら明るい場所は苦手なのでサングラスは常備している。そして近頃、旅先でこれはと思うサングラスを見つけるたびに買ってしまう謎の癖がつき、シンの荷物は今やサングラスだらけ。シン曰く自慢のサングラスコレクションだけれど、ラキにしてみればただのムダ。まあ、中にはちょっとかっこいいかも、と思ってしまうデザインのものもあるにはあるけれど。
「いえ、それが不思議なサングラスなのです。どんな眩しいものの本質も見ることができるという」
ラキが、旅の途中に荷物を増やすなんてどうかしている、と胸の中で呆れていると、シンがいつになく真面目な顔をしてそんなことを言った。
「へえ…」
「ただ、手に入れるには南の島に渡らねばならないのです」
それはちょっとおもしろいかも、とラキがシンの目を見つめると、シンはラキの髪をふわりと撫でた後、昔々に聞いた魔法のサングラスの伝説をゆっくりと語りだした。
眩しさを遮り、どんなに光あふれる場所でも吸血鬼を守ることができるだけでなく、それをかければ何事の本質まで見通せるとか、見通せないとか。人の心も読めてしまうとか、しまわないとか。大昔の吸血鬼がとある世界で見つけた不思議な鉱物を使っているとか、いないとか。
「すげえ曖昧だな」
「伝説ですからねえ」
そのサングラスは現在ふたりがいる島ではなく、そこから船で海を渡って数日かかる南の島にあるという情報を得たシンは、次の旅はぜひぜひラキとそこへ、と密かに願っていた。
南の島、と聞いたラキが少しだけ表情を緩める。
「なんかそれ、バカンスっぽいな。南の島に旅に出るってさ」
「そうですね。あ、今回はふたりの新婚旅行を兼ねてのんびり旅行、というのも良いですよ? 新婚旅行となると~…毎晩、うふふふふ♪」
「バカ! シンに必要なものを探しに行く大事な旅をするんだろ? 毎晩うふふじゃ探せねえし第一俺の身体がもたねえよ、この変態紳士」
それに新婚旅行っていつ俺たち結婚したんだよ、と少々憤りつつも、ラキは南の島への旅に魅力を感じていた。何と言っても南の島だ。イメージとして浮かぶのは、青い海、白い砂浜。忍者と吸血鬼には場違いとしか言いようがない場所、常夏ビーチ。憧れはあるけれど、何となく遠慮していた行き先。
「なあ、南の島、行ってみようぜ?」
毎晩うふふ♪なんて絶対させないが、と心に決めつつラキがそう言うと、「うわあ!」とシンは喜びの大声を上げ、がばりとラキに抱きついた。
「嬉しい♪ さすが私のマスター、話がわかりますね! じゃあじゃあ、南の島へいちゃいちゃ新婚旅行、今すぐ行きましょう!」
「だから新婚旅行じゃ…んっ…んんん~!!」
結婚してねえし! と言い返そうとするラキのくちびるに吸い付いたシンは、新婚旅行という甘い響きと魔法のサングラスを探しに行くことができるしあわせに我を忘れ、息継ぎを忘れ……
「バカっ、ほんとバカだお前!! 息しなかったら死ぬだろうがっ!!」
「ああ、ごめんなさい……(真っ赤な顔もかわいいですよ、ラキ)」
シンがはやる気持ちを抑えきれず、無理矢理ものすごく深いキスを繰り広げてしまったためにくったりと伸びてしまったラキ。その意識が戻った途端に怒鳴られたけれど、シンは嬉しくて緩む顔を隠しきれない。うふうふ、と堪えきれないその笑い声にひどく腹がたったラキは、プンと膨れてそっぽを向いた。
「もう、今日は出かけない!! 旅行はおあずけだっ」
「おあずけ……」
シンと甘い夜を過ごした翌日はいつもだけれど、身体がだるい。だけどそれでも動けることは動けるし、シンがこんなに行きたがっているのだから今すぐに旅に出てもいいかな、とラキが考えていたというのに、キスで呼吸を止めてノックアウトなんていう仕打ち。
その上、ムッとしているラキにすぐに謝ればいいものを、「おあずけ」という響きがちょっと良くてうっとりしてしまっていたがためにタイミングを逃してしまったシンは、さらにラキを怒らせてしまった。
「お前、反省しろよ。今からギルドまで走ってってこの辺の魔物ひとりで退治してから戻って来い! それまで旅行はおあずけだ、バカ!」
「おあずけ……」
またも「おあずけ」にひっかかってうっとりしてしまい、それを見て怒りが収まらなくなったラキに部屋から放り出されてしまったたシンは、愛しい人がいる部屋のドアに縋るように頬を摺り寄せて小さなため息をついた。
「…ああ、でも。こんな試練が甘い新婚旅行の前にあるのもいいかもしれませんねぇ」
特にラキのこととなればどこまでもポジティブなシン。主人に言われたとおり、宿屋から町のギルドに走っていく。朝の光は眩しいけれど、それはこの先に続く甘い時間のため。愛の力でこの町周辺の魔物をわずか数時間でちょちょいと退治して再びラキの元に戻ると、シンは驚くラキの手を取った。
「お前…早え」
「あなたのためなら何でもできるんです。さ、では、参りましょう。ふたりの愛の新婚旅行、南の島へ!」
「だから新婚旅行じゃ…」
そうしてふたりの南の島への旅は始まったのだった。
【それは魔法のサングラス】2 へ続く

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